Zineを作ろう!と思い立ったので、「そもそもZineって何よ」というところから制作までやっちゃおうという連載企画。つくろう!の前の長い道のりを紹介していきますが、第3回のテーマは「何となく歴史も紐といてみる」です。

 

  “MAGAZINE”とは

「MAGAZINE」という単語、実は“雑誌”という意味以外にも“弾薬庫”という意味がある。マシンガンの弾丸がたくさん入ったケースのことだ。機関銃とかにガシャーンと装填するアレです。

 

実はこの「MAGAZINE」、アラビア起源の言葉なんだそうだ。アラビア語では「Makhzan」といい、「倉庫」という意味。

 

 

知識の倉庫、だから「MAGAZINE」。雑誌は知識の宝庫だってわけ。いま、そういう本来の雑誌的なものというものは商業的に成功を収めにくいかもしれないけれど、個人的には都築響一さん辺りは結構好きだ。

 

フリーランスの編集者として『POPEYE』『BRUTUS』(マガジンハウス)などで活躍する。その後、それまであまり被写体にされなかった東京の生活感あふれる居住空間を撮り『TOKYO STYLE』(京都書院、後に筑摩書房刊)としてまとめ、写真家として活動を始める。(Wikipedia“都築響一”より)

 

よくサブカルチャーの文脈から語られることの多い都築さんですが、雑誌/編集という文脈のなかで語ったほうが、その切り口の鋭さを理解できるんじゃないかとも思う。

 

メディア論的な話はややこしいので置いておきます。参考までに。

 

・再起動せよと雑誌はいう(仲俣暁生)

・新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に(小林弘人)

 

都築響一の編集はとても面白くて好きだ。「TOKYO STYLE」という書籍を知ったときの衝撃。これは凄いと思った。

 

・TOKYO STYLE(ちくま文庫)

・賃貸宇宙UNIVERSE for RENT〈上〉(ちくま文庫)

・賃貸宇宙UNIVERSE for RENT〈下〉(ちくま文庫)

・着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS

・東京スナック飲みある記 ママさんボトル入ります!

・イメクラ:Image Club (アスペクトライトボックス)

 

以前、トークライブにお邪魔したことがあるのですが、とても気さくな感じで“いいおじさん”って感じだったけど話も興味深く、「僕ら編集者っていうのは、ググっても出てこないものを見つけ出すというか、切り口を開発する姿勢が大事なんだと思いますね」と話していました。

知識の倉庫を編集する。Zineは何を編集してきたのかを今回はちょっと覗き見したい。

 

<参考>

・ROADSIDERS’ weekly(都築響一の有料メールマガジン)

これもまた、MAGAZINEである。

 

  “Zine”の出自

Zineはどこから生まれたのか、というのは難しい議論みたいだ。というのも定義が広すぎて、どこをポイントにしたらいいのかよく分からない。自費出版というキーワードをたどると、古くはアメリカ独立戦争時にThomas Paineが発行した「Common Sense」をそのルーツにできるとも言われてる。「Common Sense」は政治的な主張をするために書かれ、フィラデルフィアで発行された。そのパンフレットは3ヶ月で12万部を売り上げたと推測されてる。必ずしも優勢ではなかった独立派の気運を盛り上げるのに一役買ったことは確かそうだ。

自費出版というのは普段生活しているとあまり馴染みの無いキーワードだけど、文芸誌ではけっこうよくある。小説や雑誌を同人を組んで出版するものが一般的。日本の近現代文学史のなかでも頻出するものだ。白樺派とかね。Zineと直接的に関係あるところでいうと、1950年代のサンフランシスコに集まった詩人達が始めた自費出版が一連の始まりかも、と言われているらしい。

 

もっとDIY(Do It Youself)、コピー機なんかで刷った荒削りの制作物を踏まえると、50年代から下って80年代後半から90年代のスケーターが中心になった西海岸カルチャーを、Zineの発端にすることもできる。有名なのはMark Gonzales。プロのスケートボーダーで、adidasにGonzalesモデルとかありますね。僕も持ってましたけど。

 

 

・Mark Gonzales(Movie Library)

 

英語版のWikipedia“Zine”の項目はとても面白い。こちらは単純にプリンティングに焦点を当てているので、少し違うかもしれないけど、参考までに。時間かけて邦訳をつくってもイイかもしれない。とても凄いのでリンク載せときます。

 

・Zine(en Wikipedia)

 

  浅いけど深いような“Zine”の歴史

 

出典が確かなものを探していたのだけれども、金沢の21世紀美術館の資料が一番整理されてるみたいだ。とても分かりやすい。英語版Wikipediaの内容を邦訳しているようで、広報用ではないみたいだけど、参考にしながらまとめてみよう。

 

◯1990年頃

【アメリカ】

ビジネス・コンビニ「kinko’s」がアメリカ全土に進出。印刷機を持たない一般層も大量印刷が可能になり、コピーとホッチキスで作られるFANZINE (同人誌)が普及。カルチャーの前にベースとしてのツールが揃うのはHIPHOPや他の文化と同じだって言えるかもしれない。

 

◯1990年代初頭

【アメリカ / イギリス】

若い女性パンク・バンドを中心としたフェミニズム運動として、「Riot Grrr(ライオット・ガール)」ムーブ メントが発生。バンドファン向けのZineが発行され、読者が急激に増加。

高度な編集作業を経ていないZineは実際かなり読みにくい。読者の啓蒙という点ではこのムーブメントが読み手を増やすきっかけをつくった。

 

Bikini Kill Fanzine / Foto: Copyright Museum of Modern Art, New York

 

◯1990年代後半

【アメリカ】

伝説的スケーター、Mark Gonzalesが親友の映画監督Harmony Korine(彼の1997年『ガンモ』にも出演してます)と共にZineを創刊。ストリート・カルチャーのなかでアート表現として広がりを見せる。

アート表現という意味でMark Gonzalesが果たした影響は大きいだろう。彼は後に広がる自身の表現の先駆けとして、Zineをつくった。

 

Mark GONZALES, Harmony KORINE, ADULTHOOD, alleged press, 1995

 

・Dossier Journal » Harmony Korine Collected Fanzines

・Mark Gonzales | shelflife by visitor

・ Harmony-Korine.com|Fanzines 

 

Mark Gonzalesというと今ではスケーターとしての活動にとどまらず、画集「INVITATION」とか制作してますね(これでも10年以上ぶりの画集だったりするのだ)。Gonzalesの90年代の活動は、Jean-Michel BasquiatKeith Haringといった80年代後半のアートシーンを引き継いで、STREET/POPという文脈をもっと純度の高いアートへ昇華させた。彼自身も歴史に残る輝かしい時代だ。

 

・INVITATION MARK GONZALES

・MARK GONZALES|ZOOM10(展示)

 

◯そして、一気に広がっていく2000年以降

・TOWER RECORDS東京渋谷店でZineの販売開始。(2001年頃 / 日本)

・Benjamin Sommerhalder、アーティストに声をかけ「Nieves Books」としてZineの発行を開始。(2004年 / スイス)

・写真家のCraig Atkinson、自身を含めたアーティストのZineを出版販売するCafé Royal Booksを設立。(2005年 / イギリス)

・写真家の平野太呂、「No.12 GALLERY」で、「Nieves」とZineの展覧会を開催。(2006年 / 日本)

・ZINE’S MATE主催「THE TOKYO ART BOOK FAIR」の開催。Zineブームが加速 。(2009年 / 日本)

・デザイナー、ウルス・レーニが主宰する「Rollo Press」が一連のZineで、Swiss Federal Design Awardsを受賞。(2010年 / スイス)

 

#参考

・art-ZINE:冊子型アートコミュニケーション(PDF)

 

やはし、スケーターとかバンド、広義のストリートカルチャーとの繋がりが深いみたいだ。本来はアーティスト達が自分たちの考えやコンセプトを伝えるためのものだった。そこからインターネットやDTPの普及で、一般の素人でも参加できるようになったZine。

これからのZineは、自身をアーティストとして標榜しない/位置づけないひとたちのメディアになっていく。だとしたら、昨今のブログメディアからソーシャルメディアにまたがるCGM的な考え方にも通じるのかも。

 

  リトルプレス、ライブラリー、Others

◯Links

 ・ZINE’S MATE

・Swissのリトルプレス:Nieves Books

・Craig Atkinsonによるプレス:Café Royal Books

・Urs Lehni:Rollo Press™

・たぶん日本最大級のLibrary:BOOKLET PRESS & LIBRARY

 

◯Nieves Books

2004年に設立された「Nieves Books」はZineの歴史の中でも、シーンを大きく変えた立役者だ。オーナーのBenjamin Sommerhalderは、これまでのZineのイメージを大きく覆すアーティストによるZineを発行し始める。知り合いのアーティストの作品を刷り続けてたみたいだけど、以外にも日本人もいたり。最近のものではBeastie Boysをフィーチャーしたり、海外との連携企画も多そう。ちなみに、NievesのZineは日本でも入手可能です。下のリンクは名古屋にいたときに行ったこともある本屋さん。

 

・Nieves / ON READING

 

NievesのZineは意外なアーティストとのコラボも多くて面白そうだ。

 

Instead of Eros Avenged | Ad Rock

 

 

オフィスは観光でも入れそうです。観光スポットでも紹介されてるNieves(Shift.jp) 

 

 順を追ってアーカイブもどうぞ

・Zine “*” Project(Now Printing)