DJがプレイを披露する現場や、その感想のなかで、誰もが聞いたことのある特徴的な言い回しがある。

 

「あんなのは、DJじゃないよ」

 

いわゆるDJというパフォーマーに対して「アリ」「ナシ」というわけだ。僕はこれまで幾度となくその言葉を耳にしてきたし、多分これからも聞くことになるだろうと思ってて、しかもその言葉はとても興味深い。

でも果たしてDJに「正しさ」なんてものがあるのか?

僕はその正しさを定義することはできないなと思いつつ、その「正しさ」は2つの要素で成り立つんじゃないかと最近思ってる。それが「How to Play(音楽をどう鳴らすか)」と「What to Play(何の音楽を鳴らすか)」だ。この自説は未完成で拙く、そして綻びもある。ただし、いま考えていることと、知っていることを書き残しておくことで、これからDJを始めようとするひとが、考えている以上に奥深い音楽の世界を知ってもらうチャンスにしたい。

 

 

僕の考える「How to Play」と「What to Play」

今から考えるとそれはオールドスクールと呼ばれてもいいかもしれないのだけれど、10年以上前はほとんど全てのDJが「アナログレコード」と呼ばれる12インチのポリ塩化ビニールに刻まれた音を使ってDJをやっていた。特にハウス系の音楽を流していたDJたちはこぞってロータリーミキサー(ダイヤル式のツマミでチャンネルボリュームを調節する)を使って、暖かみのある音こそがDJの特権だと思われていた時期もあった。

 

 

How To Play = PCDJ・データDJ

しかしこの10年で「DJをやる」方法論は一変。それが新しく登場したPCDJ(パソコン内にある音楽データを使ってDJをやるという)やデータDJ(USBにデータを入れてそのままコントローラーでDJをやる)と呼ばれるスタイル。

PCDJやデータDJの伸長を支えてきたのは、ここ数年で進化してきたパソコン、特にプロセッサ処理能力の劇的な向上とパソコンと機材を繋ぐ接続規格の進化。音楽そのもののデータを高い音質で出力できる情報処理能力はもちろん、機材から出力されるパフォーマンスのコントロール情報を限りなく遅延ゼロで同期させる仕組み。パソコンがここまで進化しなければPCDJの進化は無かったと僕は思うし、それはこれまで絶対にできなかったDJプレイも可能にしたことを意味する。例えば、Richie Hawtinはデジタルとアナログを行き来している数少ない有名DJだ。

 

 

これがDJにおける「How to Play」。ここ10年のDJの進化は「How  to Play」の進化だった。

 

What to Play

一方で僕が考えているのは「What to Play」。つまり「DJはどんな音楽を鳴らすのか」という話題だ。

 

PCDJ(このサイトでは便宜上データDJも含めてこう呼ぶことにする)の機材の進化は、高度な機能がどんどん実装されていくにつれ、基本的な機能しか持たないモデルの低価格化をもたらした。そのおかげでDJの人口自体は、ここ数年で(部屋で趣味程度にやっているというひとも含めれば)激増しているんじゃないかなと思う。要は機材が安くなってDJを始めやすくなった。

そうすると、これまでアナログでDJをやってきたひとからすると、考えられないことも起こりはじめる。例えばパソコンが勝手にBPM(1分間に打たれる四分音符の数、要はテンポ、スピードのこと)を合わせてくれるので、手作業でBPMを合わせられないDJもいる。普通に考えると、クラブでは踊っているお客さんの足を止めないのがDJの仕事なので、これは考えられないことなのだ。

その他にも流行りの曲だけ流すDJ(大阪では昔から“ヨゴレ”と呼ばれてましたが)や、あらかじめmixを作っておいて、現場で音楽ファイルを流すだけっていうことをするひともいる。これはDJ界隈では冗談みたく言われてるけど、「一本wav DJ」とか呼ばれる。僕がやっているのはオールドスタイルなんだけど、その僕にとってもこの界隈がとても面白そうに見えたりもするのだ。

 

・「”一本wav DJ” って何?」 「ヤバイ奴らの手法みたいなもん」 「Welcome to Underground(ようこそ、一本wavの世界へ)」

・勘違い系CDJ #KCDJ とはなんぞや?

 

DJが使う機材、コントローラーの選択肢が広がったからこそ、今までの枠組みではちょっと理解しがたい状況も生まれつつあるのが、今のDJ界隈。そしてそれぞれに横たわっている理解の溝は思っている以上に深く、お互いが共感しがたいものになってる。

 

これからの、新しいDJ論について考えたい

だからこそDJの「What to Play」について、ちょっと考えてみたいのだ。

PCDJというスタイル自体いまだに賛否両論あるわけなんだけれども、それらは全て「How to Play」。その議論は「どう」音楽を鳴らすかに終始してて面白くない。アナログ時代からずっと音楽を愛している身としては、テクノロジーの進化でどんどん置き去りにされがちになってる「What to Play」についてもっと考えたい。

DJたちはこれまで何をかけて、何を表現したかったのか、それを今のテクノロジーでどう表現できるのか。例えば、David MancusoというDJは、そもそもミックスするというスタイルは採らなかった。その思想を今の機材で踏襲すると何が起こるんだろうか、とかね。

 

そう考えると、もっと新しいスタイルが見えてみる日も近いんじゃないかな、なんて思ったり。

 

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