スターウォーズシリーズは映画もゲームも好きなのだけれども、CMになってもやっぱり好きだなあと思う。

反乱軍が好きな男の子と、ダークサイド(帝国側)が好きな女の子が、反発しながら成長して最後にゲームのなかでも戦うというストーリー。

男の子がジェダイの格好でスターファイターの飾りにちょっかいをかけると、

女の子は家の前にデススターをつくって対抗したり、、、。

これは長尺だからこそできるアメリカ的なCMだ。日本のウェブ広告プランナーは、総合代理店出身のひとが少ないので効率重視でプランニングをすることが多いから、こういう長尺動画を使ったプロモーションを企画する土壌というのが、実はあんまり無いように思う。

ただ、それが変化しつつあるんじゃないかなとおもって記事にしておこうというのが今日の話題。

 

けっこう昔にGoogleがTV-CMを買い付けられるオークション形式のプラットフォームを構築しようとしているという噂がたったことがある。ただ結局は実現しなかった。TVは公共性が高いものなので、オークションでリアルタイムに入札して競り勝ったアカウントが、必ずしも善良な広告主とは限らないリスクがあるから、というのが当時の見解だった。

当時は単なる噂レベルの話だったわけだけど、ここ数年でサブスクリプション制(定額制のこと)のサービスが普及していることもあって、本来は公共の電波に乗っていたコンテンツ(テレビとかラジオとか)をウェブ上で実現しようという試みは実現しつつある。

日経トレンディネットは、春にこんな記事も出していた。

米国のネット経由でテレビを視聴するOTT(オーバー・ザ・トップ)市場は、AT&TやVerizonなどのテレコム企業と、ComcastやCharterなどのケーブル回線企業、DirecTV(AT&T)やDish TVなどの衛星放送企業が月額40ドル~50ドルで数十のチャンネルが見られるサブスクライブ(定額視聴)事業を開始している。

時価総額による番組コンテンツ投資企業の比較(2017年2月時点)

今回この市場にGoogleとFacebookが参入を発表したことで、旧来のテレビは放送電波やケーブル配信、衛星配信を経由して見るものから、本格的にネットを介したWiFiのモバイル環境で見るコンテンツへとシフトする。すでに「Prime Video」として参入しているAmazonに加え、GoogleとFacebookの巨大資本がテレビコンテンツ市場に目に見える形で移って来たインパクトは非常に大きい(図1)。

Googleは2012年当時にYouTubeでのチャンネルコンテンツを開発するクリエイターを育てるために約2億ドル(約220億円)の予算を投下し、オンラインビデオ市場を育てた経緯がある。以来YouTube内には無数の「チャンネル」コンテンツが立ち上がり、「マルチ・チャンネル・ネットワーク(MCN)」というチャンネルを束ねる事業形態も登場した。今回のYouTube TVの発表はコンテンツの新芽を育てるレベルを超え、CBSやABCなどのすでに価値の付いた「プレミアム番組」の市場を広げる動きだ。

– – – YouTubeとFacebookの参入に、米TV業界が震撼(日経トレンディネット)

 

TV番組のコンテンツというのは、動画コンテンツのなかでも実はけっこう特殊なものだ。それはウェブでは当たり前のPPV(Pay Per View、視聴したいコンテンツごとに課金する方式)形式ではなく、「とりあえずチャンネルをつけたら何か面白い番組がやっているだろう」という視聴者の期待に応えるのがTVの番組の作り方だからで、日本でいうとAbemaTVぐらいしかまだメディアの規模として大きくなっているものは無い。

特定の人気番組を除けば積極的に視聴しない受け身のユーザーにはピッタリの(AbemaTVのような)オンラインTV。投資規模からすると、今後はアメリカでもこういう形態がバンバン出てきてもおかしくは無い。そうなればウェブCMのカタチもそれに合わせたものになるだろう。

例えば、「動画の始まり」という概念が無い(スイッチを入れたら番組がすでに流れている、という意味)ので、現在のYouTubeインストリーム広告のようにプレロール(動画の前に流れる広告)ではなく、本当にTV-CMのようなミッドロール(動画を見ていると途中で広告が入る)形式がそういったメディアでは主流になりそうだ。

 

ミッドロールの動画広告は視聴完了までのハードルが低い。番組の続きをみたいので、そのまま広告を見続けるモチベーションが高いから当たり前だ。なので、これまで「動画広告は短いほうがいい」とされていた日本のウェブCMも、「ミッドロールなら長尺だってありかも」というロジックは遅かれ早かれ普及しそうだ。

PRなんかで使われるのもだいたい長尺で、ツカミからストーリーまで50秒~2分ぐらいのものが一般的。PR向けの動画がこれからはもっともっと増えるかもしれない。

 

最近見た動画を2つ。

最初はバーガーキング(アルゼンチン)のPR動画。バーガーキングへ行くと「本日はワッパーは販売しておりません。よろしければマクドナルドへ行って、ビッグマックを買ってください」と言われるお客さん。

アルゼンチンのマクドナルドでは、年に一度ビッグマックの売り上げをチャリティー団体(がんと闘う子供たちを支援している)に寄付する活動をおこなっているそうだ。要は「いつもは目の敵にしていますが、今日はマクドナルドに協力します」というわけ。こういうサラッといいことする会社は好感もてるし、にくいやり方だなあと感心します。

もう1つはヒースロー空港のクリスマスプロモーション向けの動画。帽子を忘れたテディ・ベアのお客さんが、キャビンアテンダントに帽子を届けてもらう素敵な話。

最後のエンディングもチャーミングですね。

 

短尺にするか長尺にするか、そういう選択肢が増えることはプランナーにとっては有利。伝えたいことがどうしても15秒に収まらないなんてのはザラにある話だし、ドキュメンタリーを伝えるのにTV-CMの15秒フォーマットは不向きだ。番組つくろうよ、といつも思う。

ミッドロールのウェブCMが増えていけば、長尺の動画コンテンツが陽の目を浴びる機会も増えるし、これまでソーシャルメディアでのバズ頼りだったPRも、ネタありきではないちゃんと設計されたものが増えてくるかもしれない。個人的には仕事が広がるだろうなあと思って、楽しみだ。