夏にビジネスコンテストに参加するために、UNIQLO(ファーストリテイリング)の本社に行った話を書きましたが、ファーストリテイリングのコーポレート・スローガンはけっこう好きだ。

 

 

これを書いたのは、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井さんではなくて、柳井さんから依頼を受けたコピーライターの前田知巳(Future Text)さん。大学生の頃通っていた宣伝会議のコピーライター養成講座で一度だけお会いしたことがある。

前田さん曰く、大きくなる会社をつくったひとは、大抵ビジネスをやっている根本的な意義をもっているそうだ。ただ一点問題があって、それを言語化する能力があるひとはほとんどいない、とのこと。大学生の頃は議論が高尚すぎて、その意味があんまり分からなかった。

最近の広告業界(最近ではその定義自体が古いものになっていて、マーケティング業界といったほうが良いのかもしれない)の話でいうと、インターネットメディアの伸長や、テクノロジーの進化で様々なアプローチができるようになってきたわけなのだけれども、一方で前田さんの言っていたような、「なんでその会社をやってるのか、なんで働いてるのかって、意外と大切ですよね」という考え方が徐々に大事なことだと言われるようになってきている。

 

そういった「WHY」を定義したものとして、90年代以降言われてきた最有力候補が「VISION」だ。これを解説した名著に「ビジョナリー・カンパニー」という本がある。

成長し続ける企業には一定のパターンがある、とこの本では書いている。それが「VISIONARY(ここでは“理念的”ぐらいの意味)」であるかどうか、なのだと言う。

「所有権」という資本主義の原理的には、会社は株主の利益を追求するためにあるというのが通説なわけだけれども、例えばJohnson & Johnsonという企業は、奉仕すべき対象の優先順位を1に顧客、2に社員、3に地域社会、最後にようやく株主という順番になっている。顧客が利益を生み出さなければ、社員やひいては株主に還元できないというわけ。ビジネスの本来的な順番からすると、それはそれでまっとうな考え方だ。

 

ITベンチャーはもちろんのこと、多くの起業家が「ビジョナリー・カンパニー」をもとに会社のビジョンを策定したとも言われているけど、最近はもっと進化していて、もっといろんなステートメントがある。日経デジタルマーケティングのムック本を読んでいて、2018年のキーワードとしてきちんと整理されたものが書いてあったので抜粋しよう。

キーワード 定義
ビジョン
(VISION)
組織(企業)が「何年か後にこうありたい」という姿。通常、経営層によって、日々の業務フォーカスではなくより長期的スパンの中での実現を目指し、明確で覚えやすい文言にして定義されることが多い。
ミッション
(MISSION)
その組織(企業)のビジネスが今どこにあり、どこを目指しているのかを明確にするもの。経営層や社員に対して、何をどう成し遂げるべきかという姿を明示する目的。 
バリュー
(VALUE)
望ましい「企業文化」のこと。社会にどういった価値提供をするか。社員の“行動規範”として機能しているもの。
パーパス
(PURPOSE)
社員やスタッフが良い仕事ができるように、組織が顧客の生活にどんな良いインパクトを与えられるのかを明確に表現する。社員やスタッフは事業や組織の存在意義を明確化できるこよにより、働き甲斐や自組織へのロイヤリティーが高まり、顧客にとってはその組織のプロダクトやサービスを利用する必然性が生まれる。

ビジョンというのは本来数年後ではなく、もっと長い時間をかけた先に実現すべき状況というのが「ビジョナリーカンパニー」での定義だとは思うけど、割と分かりやすい分類ではあるかな。

特に最近は、最後の「PURPOSE」という言い方が流行っていて、いろんな企業の「働き方改革」とセットで検討する企業も多いんだそうだ。

 

それを「ビジョン」と呼ぶのか、「パーパス」と呼ぶのかは企業によって様々だけど、こういう流行り言葉ができると、便乗するコンサルタントがたくさん出てくるので、コンサルのひとたちは稼ぎどきなのかもしれない。社員向けのワークショップなんかも抱き合わせにして、「メニュー:ビジョン策定:100万円」みたいな感じじゃないだろうか。

僕が老齢の経営者だったら、その言葉ができる前から、その意義を丁寧に言語化してきたFUTURE TEXTの前田さんとかにお願いしたいなあと思う。