フランス第一共和制時代に活躍したウジェーヌ(Eugène)という人が残した手記のなかに面白い一節があって、含蓄がある感じが好きだ。

 

法をつくるには3杯のコーヒーが必要だ。一杯目は起案するために、二杯目は口を閉じるために、三杯目は真実を制定するために。

 

ウジェーヌは法律家というより、法律を制定するプロセスに関する専門家だ。上の言葉には議論の基本的なプロセスとして、主張することと相手の意見を尊重することによって僕たちは真実にたどり着けるということを言っている。ちなみに「真実」というのは「Truth」というよりは「我々が信ずべき真理 = what to believe」という言い方をしていて、暗に「正しいかどうかは我々の合意にかかっている」ということを主張しているんだろう。

今風な揚げ足取りをするのであれば、真実は僕たちが合意したものに過ぎない、という言い方もできるかもしれない。

 

真実というキーワードで最近面白いニュースを読んだ。マイクロソフトを創業したビル・ゲイツがTime誌を特別に編集したニュースだ。

・Bill Gates: Why I Decided To Edit an Issue of TIME

ニュースは悲観主義ばかりがはびこり、この世界が良くなっているという真実が覆い隠されようとしている、僕たちは改めてポジティブな事実に目を向けるべきだ、というのがビル・ゲイツの主張で、そのアクションとしてTimeの紙面をポジティブなニュースで編集した。

乳幼児死亡率は低下しているし、初等教育を受ける子どもは大幅に増加した。同性愛者の権利を守る法律は、現在100カ国で発効されるまでになっており、公職に選出される女性の数は世界で増加傾向。

ビル・ゲイツのニュースは、価値判断的な尺度が視点によって大きく変わるということの良い例だと思う。そしてホントの金持ちは「世界を良くしていきたい」と言うときのスケール感もパない。

 

トランプ大統領が連呼している「フェイクニュース」もそういった、価値判断的な類のほうに属するもののほうが多いんじゃないかなと感じる。

本来「フェイクニュース」というキーワードは嘘のニュースをソーシャルメディアで拡散させることで、Google Adsenseのようなネットワーク系の広告表示を稼いでお金儲けする類のウェブサイトを指していた(マジもんの嘘ニュース)のだけれども、いつの頃から「そういう切り取り方はフェイクだろ」みたいな感じに使われてる。

ヒトという動物は、それが事実か否かよりも、価値判断的にどちらか?という話題のほうに流されがちな生き物だ。ウジェーヌに言わせれば、それを社会性というのかもしれないが。

 

昨年末からソーシャルメディアでは、me tooキャンペーン(ハラスメントを受けた女性がその事実を発信・告発していくという活動)が盛んだ。

僕が気になっているのは、一般の間で「でも、そういう状況になったひとのほうにも、ちょっと原因があるよね(被害を受けても仕方のない振る舞いや格好をしていたんじゃないの?)」という言説が一定数あることで、これっていじめの問題があるときなんかにも「でも、いじめられるほうにも問題が無いわけではない」みたいな言い方に変換される。

心理学的には、ヒトという生き物は「自分に非が無いのに悲惨な目に遭うなんて、理不尽な世界があってはならない」という防衛本能から、無意識下にそういうロジックを編み出してしまうこともあるんだそうだ。それは世界の真実から目を逸らすための、悲しい自己防衛本能だとも言える。

 

価値判断的な議論はそういう情によって流されやすい性質をもつわけだけど、一方で「ホントかウソか」という事実判定的な議論が正しくなされているかというと、先ほどのフェイクニュースの件しかり、いまだ解決を見ない社会的な問題だ。

Facebookはウォール上に流れる情報フィードに対する価値の判定を「いいね」やその他のリアクションによって決める、という革新的なアルゴリズムを編み出したけど、それは真偽を判定できるほど精緻なものではなくて、「話題にしたい」ぐらいの価値しかないことが明らかになってしまった。

Facebookのマーク・ザッカーバーグは年明けの所信表明で「暗号通貨(仮想通貨)の勉強頑張る!」と意気込んでいたけど、たぶんそれはFacebook通貨発行しますっていうことよりも、Facebookというプラットフォーム上で、(暗号通貨というインセンティブを使って)どれだけヒトの挙動を正しい方向にもっていけるかを試したいということなのではなかろうか、なんて邪推しています。まあいま話題になっている暗号通貨も、実際コインの価格なんてどうでも良く、本当に重要なのはそのテクノロジーの使い道かな、とも。それがあって初めてファンダメンタルが決まるわけでしょ。

 

なんかとりとめもない投稿になりましたが、なんかそういうことを小室哲哉のニュースを読みながら思った。globeもtrfもベスト盤をもっていますが、小室さんの曲はモチーフがしっかりしつつ、ちゃんと小室節のメロディラインがどの曲にもあって、いつ聴いてもやっぱり良いなあと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=G-oNGEGc8Qc

 

あ、最後に書いておくけど、最初に出したウジェーヌというひとは実在しない、架空の人物です。

 

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