以前にも紹介しましたが、スケーターのMark Gonzalesも関わっていた「Alleged Gallery」という名のギャラリーにまつわるドキュメンタリーだ。
目次
Alleged GalleryとAaron Rose
Alleged Galleryというのは、2002年に閉鎖するまでニューヨークのイーストヴィレッジに存在した伝説のアートギャラリーだ。1992年にAlleged Galleryを創設したのはオレゴン州ポートランド生まれのアーティストAaron Rose。
Aaronはギャラリーのオーナーであり、ディレクターとして、数々のアーティストの登場とその後の成功におけるスタート地点をつくった。
Alleged Gallery前夜:1980年代アートシーン
Alleged Gallery以前のストリートカルチャー発とされたアートシーンは実は停滞気味だった。まずは80年代のストリートアート黄金期の話から始めてみよう。 ストリートカルチャーが世間のなかで認知され始めたのは、HIPHOPおよび西海岸のスケーターによる影響が大きいわけだけど、1970年代後半から特に注目されはじめたのはHIPHOPのグラフィティだった。HIPHOPにおけるグラフィティは落書きとは違った、街全体を使った自己表現の手段だ。それは落書きという動詞ではなく「ボミング」とか「タギング」といった風に「その場所に自分がいたこと」を証明することが重要である呼び方をされる。
60年代から活躍したAndy Warholが大量生産・大量消費・コピーといったものを現代性として据えて以降、アートの主題はポップさだった。それに対する新しい波として、街全体をアートとして捉えることや、力強いストリート表現に強く影響されたといったアーティストが現れた。それが80年代に黄金期を築くKeith HaringやJean-Michel Basquiatだ。
Keith Haringは1980年からニューヨーク地下鉄で未使用の掲示板に、チョークで絵を描き始める。「サブウェイ・ドローイング」というこのプロジェクトからKeith Haringは有名人になった。Keith Haringは伝説のクラブ「Paradise Garage」の常連でもあって、くねくねしたひとたちのモチーフは、Paradise Garageのフロアで踊り狂う人たちの様子からインスピレーションをもらっていたらしい。
Jean-Michel Basquiatも地下鉄や壁にスプレーペインティングをやっていた経験はあるけど、有名になるのはもう少し先で、Tシャツをつくって生計を立てていた頃から。追記:ZOZOTOWNの前澤社長がバスキアの絵画を123億円で購入したことがニュースになりました。
Basquiatの描くものは、見る人によってはおどろおどろしいというか、狂気を感じるかもしれないけど、僕はHIPHOPのグラフィティにはない力強いパワーを感じる。
停滞を打破した「Alleged Gallery」の意義
Keith HaringやJean-Michel Basquiatの活躍した1980年代以降、しばらくはストリート発のアートシーンが注目を集めることは、実は少なかった。Banksyも本格的に話題になるのは2000年代からだし、彼の上世代にあたるグラフィティアーティストKing Robboはグラフィティ界隈では有名だったけど、アートシーンを揺るがすほどの話題にはならなかった。90年代はストリートブランド全盛期なのにだ。 実際2000年以降活躍するアーティストたちは、その頃アートシーンではなく商業デザインの世界にいた。例えば、1990年代のガルズムーブメントの急先鋒となったファッションブランド「X-Girl」のロゴデザインや、あまりにも有名な少女のポスタービジュアルを制作したのは、今や映画監督のMike Mills。
商業的なグラフィックをやっていたデザイナーや、それまで注目されていなかったアーティストを、Aaron RoseはどんどんをAlleged Galleryに招き、自由に創作活動をできる場所を与えていった。
80年代のポップという概念を乗り越える原動力となったのが、Alleged Galleryであり、Aaron Roseなのだ。
Aaron Roseのその後
Aaronは2002年にAlleged Galleryを閉鎖してからも精力的に活動を続けていて、広告業界ではNIKEの仕事で有名なWieden+Kennedyから招聘されて、エンターテイメントなコンテンツを主体にしたコミュニケションを生み出す「WKEntertainment」の設立を手伝ったり、実際コマーシャルフィルムの監督もいくつかしている。 最近では「ANP Quarterly」というフリーペーパーのキュレーターもやってるみたい。このフリーペーパーは、「RVCA」というファッションブランドが刊行しているZINEのようなフリーペーパーだ。ただしクオリティはとても高くて、様々なカルチャーやエッセイを紹介しながらライフスタイルを理解できるようになってる。
ウェブ上でAaron Roseが編集した、「ANP Quarterly」は読むことができます。
Aaron Roseは映像監督であり、展示キュレーターであり、作家でもあり、と多彩な顔をもつアーティスト。そのキャリアのなかでも最も大きく、アートへ貢献したプロジェクト。それが「Alleged Gallery」という場所であり、「Beautiful Losers」という展示だった。Beautiful Losersの全貌は海外本ですがハードブックにもまとまっていて、かなり読み応えがあります。
ギャラリーに集ったアーティストたち
Mike Mills
この中でダントツで知名度を誇るのは、おそらくMike Millsだろう。NikeのCMとかつくってるひとですね。現在では映画監督して活躍するMike Millsは、もともとグラフィックもやっていた。
正直、この記事を書いているときにX-GIRLのデザインが彼のものだと知ってとてもびっくりした。作風は様々で、ペイントからはBanksyにも似たステンシル、抽象度の高いものまで、公式サイトを見るといろんな作品がある。
追記:最新作の映画「20th Century Woman」も面白そう。
Harmony Korine
あとは映画監督として有名な、Harmony Korine。映画処女作としてはドラッグや暴力描写と芸術性についての一大論争を巻き起こした「Kids」や「Gummo」が有名。 最新作では女子大生が春休みにフロリダで堕落していく様子を描いた「Spring Breakers」の監督、脚本を務めています。この映画もむちゃくちゃ面白かった。Barry Mcgee
Barry Mcgeeはグラフィックのアーティストで、たくさんの別名をもつペインターだ。なかでも有名なのはTwist。派生してTwister、 Twisty、Twisto、それ以外にもRay Fong、Lydia Fong、Bernon Vernon、P.Kin、Ray Virgilとかいろいろ名乗ってる。
東京にも来ていて、国内のコンテンポラリーアート系美術館では最高峰のワタリウム美術館で、過去に個展を開催していたこともある。
Others
と一人ずつ書いていってもいいけど、半端ない文量になるので、その他はまとめてメモっておきます。気が向いたら追記していく予定。 Chris Johanson、Shepard Fairey、Steven “ESPO” Powers、Thomas Campbell、Margaret Kilgallen、Ed Templeton、Clare Rojas。Beautiful Losersとは何だったのか?
2002年にギャラリーを閉鎖した直後から準備されたプロジェクト。それが企画展「Beautiful Losers」だ。 高尚なアートの世界とは無縁だった。アートの世界からはいわば「落ちこぼれた」ストリートの情熱と、ただ創ることを楽しむこと。それをモットーにクリエイティビティを磨き続けたAlleged Galleryのメンバーたちが最後に仕掛けたプロジェクト。それはオハイオのコンテンポラリー・アートセンターから始まりイタリアのミラノ、2008年には東京と、世界各国を巡業していく大規模な試みになった。そんな人達が昔つくったギャラリーについてのドキュメンタリー。トレイラーはこちらです。1980年代にKeith HaringやJean-Michel Basquiatが登場したものの、それ以降しばらくは、ストリート・カルチャーのなかから現われたアーティストが大きな注目を集めることはなかった。しかし90年代を通して、新しい動向の素地は準備されていたと言えよう。Alleged Galleryがニューヨークの水面下で活動した10年間は、2000年代に入ってからグローバルな展開を迎える。00年には、ストリート・アートのイヴェント「untitled 2000」がAlleged Galleryと林文浩の共同企画によって東京で行なわれ、また04年にオハイオ州シンシナティ市のコンテンポラリー・アートセンター、06年にミラノ・トリエンナーレ(イタリア)、08年に東京・ラフォーレ原宿で開催されるなど世界中を巡回したAlleged Gallery企画の展覧会「Beautiful Losers」は大きな話題を呼び、同展開催までの軌跡を追ったドキュメンタリー映画も製作された。
これら一連の流れはAlleged Galleryを中心に形成されたコミュニティから生まれており、そこに加わったChris Johanson、Shepard Fairey、Steven “Espo” Powers、Thomas Campbell、Barry McGee、Harmony Korine、Mike Mills、Margaret Kilgallenらは現在、アーティストや映像作家として世界的な評価を得ている。(Alleged Gallery | 現代美術用語辞典ver.2.0)
あらすじ
D.I.Y.(Do It Yourself)で世界を変えた、
“落ちこぼれたち”<ルーザーズ>の鮮烈なムーブメントをたどるドキュメンタリー
『スプラウト』のトーマス・キャンベル、NIKEやGAPのCMを手掛けるマイク・ミルズほか、豪華アーティストたちが出演!D.I.Y.(Do It Yourself)で世界を変えた”落ちこぼれたち”の鮮烈なムーブメントの軌跡をたどる、ストリート・カルチャー・ドキュメンタリー!
ジャック・ジョンソン、ビースティ・ボーイズとのコラボで注目を集めるマニー・マークが音楽を担当!音楽監修には『スクール・オブ・ロック』でグラミー賞にノミネートされたランダル・ポスター!
1990年代、アメリカ。スケートボード、サーフィン、パンク、ヒップホップ、グラフィティの真っただ中で”遊んでいた”若者たち。通りでスケートボードを乗り回し、壁に落書きをし、警察沙汰を引き起こし、当時の社会からはみ出していた。退屈をもてあました彼らは互いに刺激を求めて集まり、NYで小さなギャラリー”ALLEGED(アレッジド)”を始めた。そこでは型にはまらないライフスタイルを反映したアートが自然発生的に生み出されていった。世の中から”落ちこぼれ”<<ルーザーズ>>と烙印を押された彼らこそが、マーク・ゴンザレス、マイク・ミルズ、バリー・マッギー、ハーモニー・コリン、シェパード・フェイリーたちである。彼らは流行とは正反対のスタイルで、自分たちだけのスタンダードを作り上げていった。そしてこの集団は、90年代で最も刺激的なカルチャー・ムーブメントを巻き起こし、アレッジド・ギャラリーはその聖地となっていく・・・。






