TeamLabの「Borderless」を観に行ってきた。
TeamLabはずっとインタラクティブなインスタレーションに強くって、これまでの活動もずっと好きだったから、お台場でやっている「Borderless」に行ってみようというのは、わりと自然な流れ。いろんなニュースや、Instagramで流れてくる写真通りのアトラクションだった。
お台場は、いつも東京出張で滞在している渋谷からは遠いのだけれど、今回は完全に観光。しかも前日にディズニーランドに行ってきた次の日だったため、京葉線に乗ってすぐに到着したのが意外でした。
会場となっていたお台場パレットタウンは、過去に「東京レジャーランドパレットタウン店」という名前でゲームやスポーツを楽しめる大型の施設として運営されていたところ。なので入り口は狭いなあと思って入りましたが、実際の中はとても広く開けた空間がたくさんあって驚きでした。
平日の火曜日に休みとって参戦。当日はあいにくの雨模様だったにも関わらず入り口は大混雑。荷物を預けるロッカースペースや傘置き場もぎゅうぎゅう。
入って驚くのはやっぱり四方八方を埋め尽くす、プロジェクターから照射されたオブジェクト。花であったり、花でできた動物だったり、はたまた阿波踊りのような行列模様だったり。会場内はとても綺麗で、どこもかしこもフォトジェニックな感じ。皆がスマートフォンで写真撮影に興じていて、一番凄かったのは会場内で(おそらく無断ですけど)アーティストのプロモーションビデオを撮影していたこと。おそらく東南アジアのポップスグループかなあと思いますが、スタジオ収録するよりも日本でかっこいいインスタレーションの前で撮影したほうが安いっていう判断なのかもしれません。
プロジェクターだけではなく、会場には床一面が鏡になったLEDルームやランタンの部屋も。アプリや設置されたタブレットの画面と連動していて、雨や雪、森といった様々なイメージを数千のLEDで表現してくれるのは圧巻で、誰しもがうっとり立ち止まらずにはいられない作品だったと思う。
話題のスポットや映画を観に行くと、やっぱり多くのひとが訪れているだけあって感動する反面、妙にモヤモヤした感じを感じるのんは何故だろうとずっと思うんだけれど、いまだに適切な名前をつけることができないでいる。僕はこの展示にとても感動したし、明らかに楽しかったと言えるのだけども、この微妙な心境は何と表現したら良いのか。電車に揺られて都内に戻りながら、ボンヤリそんなことを考えていて、ふと気が付いた。
これは「ラッセンの原画展なるもののCMを観たときに感じるそれ」なんじゃないか。
クリスチャン・ラッセンは80年代後半から90年代にかけて日本で人気になった大衆画家だ。クジラとイルカが宇宙で泳いでいるジグソーパズルの絵を描いてたひと、と言えば30代以上の方ならピンとくるはずだ。
この展示は純粋に「綺麗なもの」という展示を目指して制作されたはずで、その部分に関しては一定の効果があったように思うものの、「観られる」というところに重きが置かれていて、会場を散策しているときに終始感じてしまったのは「こういうビジュアル好きでしょ?」という下心だった。ただ、それが心地良さや、展示会場をぐるぐる回る楽しさの正体でもある。僕の場合、最初は驚きとともに意表をつかれる展開が楽しかったものの、途中から何か接待されてるような気分になってしまった。
例えば、マルセル・デュシャン「泉」であったり、バーネット・ニューマン、マーク・ロスコといった現代アートの世界では、それが何者であるのかという解釈が開かれているところに本質がある。人々は「これはアートです」と札のついた便座を前にして、「私が見ているのは明らかに便座である。これはアートなのだろうか」という問題提起がなされている。だから僕たちは、それと向き合うために現実やその解釈と向き合わざるをえないわけだ。ここに芸術性という概念がもつ重要さが明らかになる。
対して「borderless」は完全なるアトラクションだ。そして、だから完成度が高い。参加する僕たちは、その演出の抽象的な意味を考える必要はないし、綺麗だったらいいじゃんというわけだ。非常にシンプルでいて、親切なインスタレーションであるとも言える。だから実際楽しい。
そもそもTeamLabのインスタレーションをアート作品として評価するひとは少ない理由は、おそらくそういうところなのかもしれない。
余談だけど、展示を見に行く途中にTOYOTAの展示場があって、スーパーカーとかエンジンとかバッキバキのが展示されていて、個人的にはそちらのほうが興味深かったですね。