先月に記事で書いた通り、最近の僕はみずほ銀行のウォレットアプリを使っていて、コンビニではみずほウォレットのSUICAから、近所のスーパーでは貯まったPontaポイントから支払いを済ませるようにしていて、とても快適だ。財布を分厚いものに買い換えたからというのもあるけど、結果的に便利になって、ここ数日は「もはや財布はバッグのなかに入れてしまっても良いかもしれない」とまで考えていたりもする。

ただし、この便利で最高!というのはいち個人の利用だけの話題なのであって、お金の受け渡し、貸し借りになると話はちょっと違ってくる。世の中「地獄の沙汰も金次第」とか「金の切れ目が縁の切れ目」とか言うように、お金というものは非常にナイーブで、場合によっては大事になりかねない、とてもセンシティブなテーマだ。

例えば僕は年に何回かフェスやキャンプに行くことがあるけど、テント泊の割り勘というのはけっこう面倒臭い。ある程度大人数で行くのでレンタカーやガソリン代、みんなで作るご飯類なんかを後で割り勘できるように大抵はまとめて支払うと数万円、ときには十万円を超えるときもあったりする。

払うこと自体はさして問題ではないのだけれど、問題は後で割り勘して集金するとき。基本的にみんな信用してるので、心配することは無いのだけれども、「誰が支払って誰が支払ってないか」ということを確認するのがとても面倒なのだ。LINEグループでいちいち何度も言うのも骨が折れるし、グループとはいえ公衆の面前で催促されるのは(忙しくて入金できないとか理由があったとしても)僕だったらヤダなあと思ってしまうので、強く言いたくない。ここ数年はネットバンキング経由の口座振込にしてしまえば良いじゃん!と思って、口座番号を連絡するようにしてはいるものの、入金時に口座名が表示されるひととされないひとがいたりもして、正直根本的な解決策になっていないのが現状。うーむ。お金のやりとりは難しい。

そんな理由もあって、キャッシュレスサービスというのに僕は結構期待している。

キャッシュレスサービスというのは、SUICAやApplePay、ポイントサービスというものだけを想定しているわけじゃなくって、もっと包括的にお金のやりとり自体を電子的にスムーズにやりとりすることを目指すサービスとして捉えるべきだ。だからLINE Payの割り勘あるあるや、立て替えあるあるみたいな訴求はすごく良いなあと思っていて、もっとこういうサービスを皆どんどん使って欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=Hw1GtmfSGfU

ただ、このCMのようにLINE Payで40万ぐらい立て替えちゃったら、まだオフラインの店舗で導入が進んで無いLINE Payで生活するのは正直厳しいだろうなあと冷静に感じる。お店側の決済として割り勘支払い機能みたいなものを導入したほうが、もっと利用は伸びそうだ。

どちらかというと共感できるなあと思うのは、下の「立て替えあるある」のほう。ATMが無くても支払いできるよーというのはシーンとして良いね!

https://www.youtube.com/watch?v=8Z9F30ULP30

こんな風に簡単にやりとりできる世の中になったら、世の中のキャッシュフローはもっと大きくなるだろうし、GDPも今より少しは大きくなるだろう。キャッシュレスサービスというのは、そういう可能性を秘めたサービスなのだ。

中国のAlipayはこれを店舗レベルでやっていて、近距離通信端末も不要なので導入コストはほぼゼロだ。店側はQRコードを表示して、お買い物したユーザーは読み込んで支払いを済ませる。中国では銀行のATMから偽札が出てくるぐらいらしいので、小規模な店舗はお札を使うよりAlipayを使ったほうが安全なので、どんどん普及している。Alipayでも全然良いけど、三菱UFJ銀行が実験しているMUFJコインとかは、そういうものを目指しているのかもしれない。とっくの昔に先を越されてはいるのだけれども。

商売をするときにお釣りとしての現金を用意する必要が無い、というのは経営側からすると、余分なキャッシュを保有しなくてよくなるため、とても便利だ。カナダなんかだとお釣りは四捨五入しても良いという法律もあってか、キャッシュレス化が進んでいる。将来的には、小学校とか中学校とかでキャッシュレスアプリを使うための「フィンテック・リテラシー」を教える授業も増えるんだろう。夏休みの研究で「お店開いてみた」なんてレポートが出てくる日も近い。僕はそういう社会を夢想していたりもします。

これまで社会は商売するひと-払う人という二元論で成り立ってきたけど、その垣根はどんどんなくなって、最終的には社会の構成員となる個々人が自由にお金のやりとりをする時代が到来する。テレワークやフリーランスのセーフティーネットが整ってくれば、こういう契約~支払いをサポートするフィンテックサービスは、多様な働き方を推し進める原動力にもなっていくだろう。

と、ここまで書いたところで、じゃあ個人間で送金できるサービスは他にあるのか?という話になるわけなんだけれど、それに当たるのがメタップス傘下の「pring」だ。メタップスの社長は佐藤航陽さんといって、ブログの記事は結構スマートなんだが、考え方はいつも先を見ていて本も面白い。

メタップスという会社はもともとSEO(検索エンジン向けのランキング施策)とか、ゲーム開発/EC開発向けのプラットフォームをやっていた印象だけど、知らないうちに決済市場にものすごい存在感で鎮座しており、その規模を拡大してきている。その最有力サービスがpringだ。

キャッシュレスサービス「pring」、りそなら3行との接続を開始–入出金が無料に

メタップス傘下のpringは9月3日、同社が提供するお金コミュニケーションアプリ「pring」において、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行と接続を開始したと発表した。これにより、pringアカウントへの入金および、銀行口座への出金を無料で実施できる。

pringは、送金、受け取り、支払い、チャージ、口座への出金をすべて無料で完結できるキャッシュレスサービス。銀行口座からリアルタイムでチャージできるほか、ユーザー同士による1円単位でのリアルタイム送受金、QRコードやバーコードの読み取りによる加盟店での決済、対応銀行口座への戻入れといった機能が利用できる。

同社によると今後は、加盟店での決済開始を通して、顧客基盤の拡大、送金および、決済の増加に伴う「お金コミュニケーション」の加速を目指す。また、さらなる利便性向上のため、外部連携の強化や独自性の高いさまざまなキャンペーンを展開予定だという。

– – – https://japan.cnet.com/article/35124874/

銀行口座からの入出金無料でしょ。こういうのって本来は銀行が出すべきものなんだろうなあと思うけど、銀行って事業業種の制限とかかかってるからできないのかもしれない。でもこれはすごいわーと思っていたところ、最近タクシーに乗っているときに見た車内CMに遭遇したんだけど、これがけっこう攻めてるなあと思って、いまこの記事を書いています。

「おこづかい編」と題されたバージョンのCMでは、友人から遊びらしい誘いを受けている様子の女性。ただ「手持ちがないんだよね〜」と金欠な様子。電話口の相手がなにやら口にすると「えっ!本当にっ!?」と嬉しそうな女性。そして次のカットがこちら。

おこづかい編てそういう意味なのか笑!といった感じですが、彼女と彼はいったいどういう関係なのかものすごく気になりますね。ぜひデート編つくって欲しいところです。そして次のカットは何事もなかったかのように後で待ち合わせをとりつける電話口の男性。

ここでこうして記事になってしまっていること自体が、恐らくpringプロモーションの戦略なのかもしれませんが、ぶら下がりのカットで(一見)清楚そうな女性陣が「pringでちょうだい」と画面越しに語りかけてくるシーンを眺めながら、すごいプロモーションやってるなあと感心しました。

言わずもがな、ある程度ニュースに親しみのある方であれば、「これってギャラ飲みでは?」「パパ活では?」と勘ぐりたくなるシチュエーションではある。YouTubeで広告をスキップしない自分になかなかCMが当たらず、タクシーの車内CMで当たっていることを踏まえると、結構ペルソナ狙い撃ちでやってるプロモーションなのかもしれません。要は、よくタクシーに乗る(タクシーに乗ることを躊躇しない)ひと向けのプロモーションってことだ。それはまあつまるところ、電話口の男性のほうを初期の利用ユーザーとして想定しているってことなのかもしれません。ちなみにパパ活やギャラ飲みというのは以下の意味です。

女性が経済的に援助してくれる男性(いわゆる「パパ」)を探す活動を指す俗な言い方。援助交際の女性目線の言葉でもある。肉体関係の有無を含め、どのような支援をして貰うのか交渉を行い支援をして貰う。(中略)本作においてパパ活は「入り口のモチーフ」として使われており、物語は「年の差恋愛」のみをテーマとしてはいない。ヒロインである杏里がパパ活を開始するのは生活費を稼ぐためであり、背景にある「貧困女子」という現代の社会問題や、航の抱える心の闇をも描いている。- – – Wikipedia(パパ活 ドラマ)

こういうスタートアップ(ベンチャー)によるサービスというのは、初期段階では経営のためのキャッシュが肝心なので、想定するユーザーは「そのサービスを使う経済的なメリットが大きいひと/そのサービスを使わざるをえないひと」というのを設定する。そのほうがサービスへの定着率も高いし、将来的に手数料を徴収しても使い続ける可能性は確かに高い。フェスで割り勘するひとなんて、規模も小さいし頻度も高くない。ギャラ飲みしてるひとを狙ったほうが効果的なのは当然だ。

日本人は(大学のSNSから生まれたFacebook、速報を伝える手段として開発されたTwitterなどを産んだ)海外と違って、WEBサービスの利用リテラシーというのが格段に低い。自分から新しいサービスを使って、生活を改善してゆくというマインドを持っているひとは、ほとんどいないと言って良い。そんな日本で生まれたサービスであるmixiやLINEは、当初は出会い系ツールとして使われてたわけだし、そういう歴史を知っているひとなら、ある程度賢い戦略だなあとも思う。

本来は、LINE Payみたいな、こういうシチュエーションなんだろうけど↓。

あと、カップル編では「公共料金はタイちゃんが払うって言ったよね?」と、おこな様子の彼女、というか新婚なのかな。食費は彼女、公共料金は彼氏が払っているのかもしれません。割り勘できるなら全部割り勘しないのかなと思ってしまったこのカップルの続編にも期待です。

個人間の送金というのは、こういう意味でとてもシビアな見られ方をするのが常だ。また、個人間で電子的にお金をやりとりする、という行為自体が一般化していないこともあって、各社訴求の整合性をとるのは難しそう。本当は、LINE PayみたいなCMをずーっと流し続けて、世の中を啓蒙していく必要があるんだろうけど、広告を出稿し続けるにはコストもかかる。それに後続のサービスが、その状況にタダ乗りする可能性もあるので、経営判断がとても難しい(これを経済学ではフリーライド問題と呼ぶ)。

いずれにせよ、日本でもキャッシュレスがどんどん進んでくれたら良いなあと、僕は思っています。

 

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