高校の頃、僕は数学が苦手で、現代文や世界史のほうが得意だった。

世界史が好きなのは高校の頃の先生の影響で、曰く「世界史は暗記ではない、壮大なドラマだと思えば楽勝だ」と常々繰り返していて、先生の「さも歴史の当事者とさっき居酒屋で話してきた」みたいな授業は、僕にとってはとても楽しかった。僕は一切ノートをとらず、授業を聞きながら世界史の図説を開きながら、あれこれ想像していて、本当に楽しかった。毎期の期末試験では決まって「なぜ歴史はそうなったのか」を答えさせる超難問の自由記述問題が最後の設問にあって、僕は毎回その解答を完璧に答えることをゴールに設定していた。私立大の受験では世界史科目はほぼ満点から、世界史で大学受験を通過したといっても過言ではないかもしれない。ものを教えるのが上手なひとというのは、ああいうひとを言うのかもしれない。

いまの広告の仕事でもそうだけど、僕は「何と何が起こると、どうなる」という因果関係をストーリーとして捉えるのが好きだ。世の中は生き物で、一見すると関係がないように見えることでも、それは技術の進歩や、ひとの思惑の組み合わせが、社会を動かす原動力になる。

DJもおそらく同じものだと思っていて、どの曲からどの曲へ移っていくのが最も妥当な選曲か、エフェクターのどのパラメータとどのパラメータを組み合わせて、どのタイミングで出力するのが最も効果的か。HOUSEやTECHNOで使われているテクニックはHIPHOPには応用できないのか。そういうのを考えるのはとても楽しい。

 

一方で数学は苦手だった。本当は建築家になって、シドニーオリンピックの会場みたいな、大きな建築物の設計図を作る仕事がやりたかった。ただ残念ながら箸にも棒にもひっかからないレベルで数学ができなかったので、担任の教師に止められた。あのとき頑張っていれば、いまは違った会社に勤めているのかもと思う。

数学で唯一できたのは微分積分で、それは何故かというと、当時数学の先生が僕の成績のなかで微分積分だけなぜか点数が良いことに気づいて、いろんな解法を教えてくれたからだった。

お前は微積の問題だけは点数が良い。数学は完璧に矛盾することなく完成された学問だから、全部微分積分の問題だと思えば、時間はかかるかもしれないが解けるはずである

と、そう断言していた。事実そうだった。試験で取らなければならないそこそこの点数を、全部微分積分の問題にして解いていて、友達からは変態と呼ばれていたけど、僕にはその解法しか無かったので、いつもそうした。これは今でも役に立っていて「難しい企画も、概念的に同じものに置き換えて考えると、考えがスムーズになる可能性がある」といつも思っている。本当に感謝しかない。

 

とはいえ数学が苦手だったことに間違いはなく、僕は言語的な意味から離れた抽象的な思考をするのがとても苦手だ。例えば1には一人とか、1個とか、現実にはそういうコンテクストがあるはずで、Logとか言われても正直触ったり食べたりできない想像上のものを理解するのが難しい。

とまあそういう学生時代を過ごしていたわけなんだけど、最近高校数学を勉強し直したいと思っていて、というか勉強し直してる。

世の中には親切なひとがたくさんいるもので、YouTubeには数学の定理や意味をきちんと文脈で解説してくれている数学系YouTuberというのがいて、そういうひとの動画はむちゃくちゃ分かりやすい。これといって仕事に役立てようとか、そういう魂胆は一切なくって、単純に理解できた瞬間の楽しみのためだけに数学を勉強する。なんと崇高な夜更かしだろうか・・・なんて思いながら、いろんな定理を日々勉強し直しています。ちなみに、今日は「対数」までたどり着きました。

なんで数学を勉強し直してるかというと、以前Podcastで「Wikipedia特集」をやったときに話さなかったネタで、「人類史上最も美しい数学定理」呼ばれていて、映画「博士の愛した数式」にも登場するオイラーの等式というのがあるんですけど、なんでこれがすごいのか理解できなくて、ゼロから高校数学を勉強し直そうかとなったんですよね。

ここで、は?となったひとのために掲載しておくけど、オイラーの等式というのは、オイラーの公式から導き出される等式。オイラーの公式はもともとこういう形をしています。

 

 

こっからものすごいややこしいんですけど、これはeの指数関数が、実は三角関数と関係しているという意味で、これをさらに変形して導きだされるのはが、この↓オイラーの等式。

 

 

端折って言うと、指数関数というのは解析学な要素なのに、円というのは幾何学的な要素で、それが綺麗にうまいことシンプルな式に収まっているのが素晴らしいと。そういうことなんですけど、高校数学で挫折した身からすると、このeというのとサイン、コサインがなんで並んでるのかずっと気になってて、会社で訊いても教えてくれるひとがいるわけでもないし、どうにかして勉強できないかなあと思ってたんですよね。

ここで、eという数字についてちょっと復習のために書いておくと、eというのは自然対数の底。名前は覚えなくて大丈夫ですが、たとえばこんな計算をしてみるとします。

 

 

これは、普通に計算すると、こうなりますね。

 

 

じゃこの分数の10と指数の10を同時にもっと増やしてみると、どうなるんでしょうか?

 

 

もっと、もっと増やすとこうなります。

 

 

この、分数の分母と指数の数字を同時に大きくする、という方法は、どれだけ大きくしても3を超えることはないことが知られていて、ずーっと続けると限りなく「2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 … 」という数字に近づいていきます。

あるとき、この性質に気が付いたひとがいて、もっと汎用的に使えるように代数を使って一般化できないかと試みた結果、こんな形になりました。

 

 

ただ、分母と指数をどんどん大きくする、という作業も文章で書くのは面倒臭い。そこで上の式の「nを無限大まで大きくするという作業」という書き方を開発。それがこれです。

 

 

意味は「(1+1/n)をn乗するという式が与えられたとき、nを無限大まで大きくしたときにどうなるか」です。なので、この数字はどんどん「2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 … 」に近づいていくはずだから、定義としてeという文字で表そう。そうしようそうしようとなったわけ。

 

 

正直言うとここまでは知っていたんですが、そもそもなんでこんな定義作ったのか?っていうのが自分のなかでは謎で、だからこれ以降の数学の話に全然ついていけなかった。興味が湧かなかったとも言えるかもしれません。もっと死んだ数学者のドキュメンタリー的なものとかをNHKスペシャルあたりでやってもらわないと、数式の意味が全然頭に入ってこないですよね。そもそもこんな複雑な定義、現実社会で使えるのかよと(実際にはものすごく使われている)。

なので、前後の文脈から理解するには、高校数学を全部理解する必要があり、最近は数学系YouTube動画ばかりを観ています。

いろんな数学解説動画を観てるんですが、動画のクオリティはさておき、解説として今の所一番分かりやすいなあと思って観てるのが、このひとのプレイリストです。

YouTubeには、受験数学のほかにも上のような動画とか、面白いものがたくさんあるので、勉強できなかったことを後悔しているひとは、見直してみるのも良いかもしれません。

僕が好きなのは素数には法則があるか?という謎に挑んだ話。

最後に宣伝しときますけど、「博士の愛した数式」は名作なので、勉強する前にモチベーションをつくっておくと良いかなと思います。