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オーディオファンの間では、アンプにこだわってスピーカーも自作して、理想の音を追求するというのが一つの趣味として確立していますが、DJ界隈ではそういうことをやるひとは滅多にいません。というわけで、DJにとって理想的なサブウーファーというのを自作(DIY)してみたので、制作方法をまとめてみました。

手っ取り早く確認するならYouTubeをどうぞ

記事で紹介する前に、10分ぐらいの動画を編集してみたので、手っ取り早くイメージを確認したい方はYouTube動画でどうぞ。

動画には入りきれなかった細かい部分や設計の意図なんかは、今回の記事で紹介していきたいなと思います。

今回使うスピーカーユニット

スピーカーユニットは、れっきとしたウーファー向けのスピーカーでDayton Audio製。Dayton Audioはアメリカオハイオ州にあるオーディオメーカーです。Daytonというのはオハイオ州にある地名で、そこから少し離れた郊外に本社を構えています。創業して20年以上が経っていて、メインはホール会場などで使うラウドスピーカーのユニット開発。オーディオメーカーへのOEM生産も請け負っており、信頼性とロープライスはかなり助かる!ということで選んでみました。

今回使うユニットは外周175.6mm。振動部は144mmぐらいの手頃なサイズ。この一つ上のサイズだと「Dayton Audio DC200-8 Woofer 8Ω」というモデルもあったのですが、設計時に大きすぎてエンクロージャーを用意できないことが判明し断念。

とはいえウーファー特化でこれだけのサイズがあれば、部屋で鳴らす分には全く問題ないかなと思います。レビューでも「癖が少なく扱いやすい」と買いてあったので初心者にも良いのかなと。制作してみた結果、かなり満足してます。

自作スピーカーの制作手順

1.ピーカーの設計

というわけで、まずは設計から。通常スピーカーを自作する場合、普通の直方体の1面にスピーカーユニットを取り付ける穴を開けて、という手順をとることが一般的です。ただし、今回は自分のDJブースに設置することを見越して考えてみました。

DJブースの場合、少し離れて音を楽しむリスニング環境とは違って、比較的近距離に左右のスピーカーが設置されていることが多いです。そのため今回自作するサブウーファーを追加した場合も、極力同じ距離で設置したほうが良いはず。具体的にはDJミキサーの置いてある真正面かつ近距離。ということは、ユニットの向きを少し上側に調整したほうが良いかなと思い、フロントパネルに10°傾斜をつけてみました。

低音には指向性が無いからフロントパネルに角度をつけても意味がないよ、という自作スピーカー警察に怒られそうですが、一応記載しておくと重低音だけでなく他の周波数も調整して鳴らすので上記のように設計してみてます。

また設置位置の関係で下側にバスレフポートを設けることができなさそうだったので、左右に空気の流れをつくり、仕切りを設けて長さを確保したバスレフポートをつくっています。

設計図の制作にはAdobeのIllustratorを使いました。普段デザインの作業をするときに使っているので使い勝手を知っていることに加えて、印刷物を制作するモードで図面を引けばmm単位で表示してくれるので、木材を購入するときのカット図面も合わせてつくりやすいです。

1.板の用意と加工

Adobe Illustratorでカット図面もつくったら木材を購入。東急ハンズ新宿店で購入し、大まか他なカット依頼もしてみました。普段は加工しやすいパイン材を使いますが、今回は白すぎるとスピーカーの色と違いすぎるかなと思ってアカシアの集成材を選びました。

東急ハンズにはカット依頼用の用紙が置いてありますが、自分で作成した図面で理解してもらえれば、それでも問題ないのが気に入ってよく通っています(カット枚数が多くなると店頭で図面を描くのは手間)。

特に、スピーカーユニットを取り付けたり接続端子を取り付ける部分の穴は、綺麗に加工するのが素人には難しそうなので東急ハンズでやってもらっています。

エンクロージャーの角はすべてR加工をつけて丸みをつける予定。さらに、フロントパネルの上端は傾斜をつけている関係で斜めに削り取る必要があります。そのためにマキタ製のトリマを購入しました。トリマというのは一般的には板材に対して直角に刃を当てる工具なんですが、傾斜をつけて削る必要があるので、角度をつける専用のトリマアッセンブリというアタッチメントも購入。

それぞれ加工後の断面はこんな感じになります。左は傾斜ベース(トリマアッセンブリ)を取り付けてストレートビットという刃で削ったもの、中央は通常のベースを使ってボーズビットという丸い刃で加工した断面です。左はボーズビットで加工したフロントのバスレフポート部分。

内部の仕切り板を上のように加工するのは、内部で空気の流れが発生した際に、余計な気流が発生して音が淀んだりノイズや振動を起こしたりするのを抑えるため。フロントパネル左右のバスレフポート部分にも出口付近での気流の乱れが発生するのを抑制するため、R加工を行っています。トリマベースアッセンブリは在庫切れのようですが、他の工具やビットは概ねAmazonで調達できます。

MDF材をノコギリでカットして自作スピーカーを組み立てるのも良いですが、トリマを使うと精度がかなり上がるので仕上がりも綺麗だしおすすめです。

2.組み立て

ある程度ちゃんと設計していてカットした板の精度が高ければ、組み立てはそこまで難しいものではありませんが、クランプやコーナークランプを使ったほうがきちんと直角でピッタリ固定することができます。動画内でも言及していますが、適宜指矩(曲尺)を使って直角を確認しています。

そんなに高いものでも無いので、DIYをよくする方はコーナークランプ、普通の樹脂製クランプ、指矩は3点セットで買っておくと良さそう。

その他のポイントとしては内部の角を埋めるということ。内部は防音材を貼るのでそこまで気にしなくても良いかもしれませんが、不要な空気の流れや定在波を極力抑えるために、エンクロージャーの内部には桟を入れてできるだけ角をなくしています。

桟を取り付けた際の隙間は木工用ボンドとおがくずを混ぜたパテをつくって埋めてみました。自作スピーカーキットなどを出している音工房さんが、専用の桟を出しているのですが、このパーツは角が面取りされているので、取り付け先の角にボンドが残っていてもピッタリ取り付けることができるという優れもの。

自作スピーカー界隈では、こういう自作キットやパーツも多いので、自身での加工に行き詰まったら探してみるのも良いです。案外求めていたパーツが数百円で売られていたりします。

3.塗装前の表面加工

組み立てが終わったら塗装ですが、DIY全般に言える塗装の手順として「ヤスリがけ」が必要。今回塗装に使うウレタンニスの説明には「280~320番でヤスリがけしてください」との記載があります。ただし、今回はボックスになって板が組み合わさっているため、最初にカンナで全ての面を合わせる→それぞれの角にトリマでR加工(3R)→80番台から320番台まで順にやすりがけ、という順番で下準備しています。

粗い番目でも、ヤスリではツライチに揃えるのにかなり時間がかかります。最初にカンナで削って揃えておいてからヤスリがけするのがポイント。300番台までヤスリをかけると結構ツルツルになって気持ちいいです。この下準備をするかで仕上がりが結構違うので、塗装する方はぜひ挑戦してみてください。

4.ウレタンニスで塗装

スピーカーだと黒というのが一般的ですが、黒く大きなサブウーファーだと部屋が狭く見えるので、今回もウレタンニスのツヤ消しクリアで塗装していきます。過去3回ぐらい使っているアサヒペンのニスは2液混合方式で面倒に見えますが、実際の使い方は簡単だし、塗装中の匂いもキツく無いので窓を開けていれば室内でも塗れます。

塗装を綺麗に仕上げるためには2度塗りが一般的なわけですが、ただ2回塗れば良いというわけでもなく、塗った後に24時間ぐらい乾かした後にヤスリをかけることで2度塗りを綺麗に仕上げることができます。塗装する際も普通の刷毛ではなく、コテばけを使うと広い面積を均一に塗装できるのでオススメ。

コテバケで塗ると板材の端に塗料が垂れやすいので、適宜刷毛で垂れた塗料を均すように仕上げると塗料が溜まってダマにならず綺麗に仕上がります。

一度に全部終わらせようとせず、ちょっとずつ時間をかけて丁寧に作業すれば、既製品の家具ぐらいの仕上がりは簡単に再現できます。

僕はいつもツヤ消しクリアですが、ウォルナットなど色のついたものもあるので、いろいろチェックしてみてください。

5.配線とユニット取り付け

エンクロージャーが完成したら内部の配線を行なっていきます。具体的には、バナナプラグにも対応しているターミナルを取り付け、エンクロージャー内部でターミナルからスピーカーユニットへケーブルを繋げて、それぞれを固定する作業。

当初の計画では、スピーカーケーブルに平型端子を取り付けてそれぞれのパーツと圧着固定して終わりにしようと思っていたのですが、平型端子が結構ブカブカだったので、急遽はんだ付けして絶縁スリーブで覆うことにしました。つけすぎるのは良くなさそうなので、接点部分が外れないように、というぐらい軽い処理です。

使っているケーブルはZONOTONEという品質が良いケーブルを選んでみました。ZONOTONEは前園サウンドラボという東京中野にあるオーディオ関連製品を開発・販売している会社から売り出されているケーブル。電流の流れる向きも指定されているケーブルで、結構高品質な部類のケーブル。

自分は素人なのでちゃんとしたやつを買っておけばまあ大丈夫かなという甘い考えて買ってみましたが、実際ケーブルの硬さもちょうど良く純度の高い銅線も扱いやすい。買って正解でした。

その他のパーツ類としては、はんだ付けした部分を覆う絶縁スリーブ。大きめの250型平型端子に使われているスリーブを使っています。

品番EL04 250型 平型端子 30セット オス・メス 絶縁スリーブセット
イネックス(INEX)

使ったはんだゴテは特殊なものではなく、温度調整できる安価なセット品を購入。念の為、はんだはセットのものは使わず、音響用として売り出されているものを使っています。

ケーブルのはんだづけが終わったらエンクロージャー内部に吸音材を入れてそれぞれのユニットを取り付け。

自作スピーカー界隈では、吸音材は入れる派と入れない派、などがいるそうですが、あんまり妙な振動が増えすぎるのも嫌だなと思ったので、中央の空間にだけ両面テープで貼り付けた簡易対応としています。

サブウーファーとしてはこれで一旦完成。

外ヅラの仕上がりとして非常に満足。組み立ててみて体感しましたが、ウーファーの外周17cmって結構でかいので20cmにしなくて良かった。バスレフのポートも左右にして横に長い形状にすることで、容積もかなり確保できて満足しています。

一般的にはターミナル端子はエンクロージャーの背後についているものですが、写真にもある通りDJテーブルが窓際に設置されているので後ろに手を伸ばしにくく、横から伸ばすかたちにしました。結果、ケーブルの取り回しもしやすく接続しやすそう。

6.アンプの用意

あとは接続するだけなんですが、このスピーカーはパッシブ型。いわゆるアンプ内臓ではないので、DJミキサーから出力された音をアンプを通してスピーカー駆動レベルまで上げる必要があります。過去のDJブース関連動画では、FX AUDIOの「FX-2020A+」というモデルを使っていると紹介していますが、今回はサブウーファーなので、ステレオをモノラルに変換できるサブウーファー専用のアンプを使う必要があります。というわけで選んだのがAIYIMAのA1001というアンプ。TPA3116D2というのは内蔵しているTexas Instruments社のチップの名前なので、ご注意ください。

並べてみると気づくんですが、これFX AUDIOのアンプとそっくりなんですよね。電源スイッチの機構も跳ね上げ式で、ノブの質感もかなり似ています。

FX AUDIOは日本のNorth Flat Japanという会社のブランドなので、おそらくOEM生産してる工場がAIYIMAなんじゃないかなと思います。

A1001の左側のスイッチは電源、右側のスイッチはサブウーファーと通常モノラルとの切り替えスイッチなっています。サブウーファーのスイッチが入っていると、カットする周波数をノブで調整することが可能になります。もちろんボリュームのコントロールも可能です。

中音域、高音域ははMarantzのLS-5Vから引き続き出力しようと思っているので、DJミキサーからの音声はステレオスピーカー向けと、今回のサブウーファー向けで分岐させる必要があります。ということでRCAの分配ケーブルを使って2系統に分岐。

さらにアンプからサブウーファーへのケーブル長を、LS-5Vへの長さと同じになるよう、同じスピーカーケーブルを用意しました。つまり前回と同じのAmazonベーシック製。

このケーブル、品質はさておき(使ってて違和感は無いのでおそらく大丈夫)バナナプラグ付きで安くて気に入ってます。

昔よくあった銅線をよじって端子にねじで圧着するタイプより圧倒的に扱いやすいので、今後もこれを買っていこうかなと思っています。

7.設置時の防音&防振対策

最後に設置の際の防音対策。そもそも大音量で近所迷惑になるほど音は出しませんが、念の為に設置するスピーカーの座布団としてスポンジゴムと防振パットを敷いて振動対策を行なっています。窓枠に置いてあるので振動が伝わったら嫌だなと思って、用意してみました。

防振関連のグッズって、テープにしろゴムにしろ匂いがキツいので、届いて開封した後は数日ベランダに干してみたり洗ってみたりして脱臭しておきましょう。

まとめ

設置してみるとこんな感じになります。高さを出すと圧迫感があるので、DJミキサーや他の機材とほぼ同じ高さに設置。隠れてるように見えますが、実際にはDJブースを上から見下ろす形になるので、下から低音を感じるようなイメージです。

アンプ内蔵にでもしなければ、自作スピーカーって結構簡単につくれるんだなと感じた今回のサブウーファー制作。ただ容積やバスレフの形状など、音の出方にこだわりはじめるとキリが無いので、どのあたりで妥協するかって感じでしょうか。自分はピュアリスニング派ではないというのと、あくまでDJブース向けのサブウーファーであるという前提なので、作るのも楽しかったし、実際鳴らしてみて大満足です。

DJブースってDJするときに楽しい!っていうのが前提の趣味ではあるので、今回のような愛着をもてるスピーカーを用意してみる、というのは楽しい選択かと思います。特に最近ではレンタル工具や、郊外であれば木工室の時間貸しなんかも結構あるので、工具を買わずに制作できるところも良いですね。

ステレオ2本にサブウーファーだとスペースが取れない・・・という方にはDJ向けのちゃんとしたモニタースピーカーがやはりおすすめ。DJ向けのスピーカーについては、おすすめをまとめているのでコチラをどうぞ → 自宅でDJ!初心者向けおすすめスピーカーの選び方と基礎知識

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