当ブログ、初心者の方向けにまとめたスピーカーに関する記事(自宅でDJ!初心者向けおすすめスピーカーの選び方と基礎知識)がとても読まれていて、スピーカー何買えば良いですか?とかたまに相談されます。ぶっちゃけ使い勝手や音の好みの問題とかもあって、訊かれるたびに歯切れの悪い回答しかできてなかったんですが、せっかくなので今後はメーカーごとに初心者おすすめでコスパの良いスピーカーをピックアップしていこうかなと考えています。というわけで初回は、われらのPioneer DJ!

スピーカーの雄「Pioneer」ブランド

スピーカーから生まれた国産ブランド“Pioneer”

福音商会電機製作所「“PIONEER” A-8」

世界ではトップDJ機材メーカーとして有名なPioneer DJ。ただ、実態としてはPioneerから分社化・売却されていて、会社名もAlphaTheta株式会社という名前になっていることまで知っているひとは少ない。またかつての本体だったPioneer自体も、今となっては祖業をオンキヨーホームエンターテイメントへ分割譲渡していて、現在は車載関係の機材、要するにカーナビやカーオーディオに限定したメーカーになっている。

Pioneerという会社はもともとスピーカーをつくるための会社だった。1937年に創業者である松本望が開発した純国産のダイナミックスピーカーが「A-8」。それを販売するために設立した会社が、Pioneerの前身である福音商会電機製作所だ。Pioneerという名前は「A-8」の商標として考案され、後の1961年に正式に社名として採用された。

その後スピーカーやカーオーディオで世界的音響メーカーに成長する過程で、DJ関連の機材でヒットを出すのが1992年。これまでアナログレコードを前提としたターンテーブルとミキサーが主体だったDJ機材業界に、「CDプレーヤーを使ってDJプレイをする」という概念を持ち込んだ「CDJプレイヤーー」を発売。一躍ヒット商品になり、DJ機材のデジタル化の波に乗り、本格的にDJ関連の機材事業部門であるプロSV事業部も世界トップに成長していく。

90年台のPioneer機材はDJミキサーにBPMカウンターを初めてつけたり、革新的な機能をどんどん開発して搭載していく、かなり尖ったメーカーだった。

独自の道を歩み始めたPioneer DJ

ところが、会社が傾きはじめるのが2000年台に入ってから。スマートフォンの普及もあって、高級カーナビの売り上げやOEM事業が落ち込み、本業のカーナビ事業の経営が危うくなってくる。そしてついに2015年、プロSV事業部はアメリカの投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に事業譲渡。このタイミングで「Pioneer」というDJ機材ブランドはなくなり、「Pioneer DJ」が誕生したというわけ。ちなみにライセンス自体は現在もパイオニア株式会社が保有している模様なので、完全に縁が切れたというわけでも無さそうですね。

ちなみにKKRはその後に持ち株をノーリツ鋼機株式会社へ売却。現在はノーリツ企業グループの傘下に収まっています。が、ノーリツという会社の性質も実態としてはファンドみたいなものなので、何か立ち位置が変わったかというと、そうでもなさそうです。いずれにせよ、事業縮小などの憂き目に遭わなくて本当に良かったなと思います。

想定する用途に応じて用意されたラインアップ

現在Pioneer DJからは、想定するターゲットに応じてモニタースピーカーと業務用のスピーカーがラインナップされています。個人のDJブースや小規模な楽曲制作スタジオでのモニタースピーカーは個人向け、PAスピーカーは大きなサイズのスピーカーで業務用途といった感じです。今回は個人宅のDJブースに設置するモニタースピカーを中心のほうを詳しめに紹介していきます。

モニタースピーカーラインナップ

VMシリーズ

VMシリーズは2021年の4月から発売された、Pioneer DJブランドを冠する最も新しいモニタースピーカーシリーズ。「S-DJ Xシリーズを継承」としている通り、スペック的には後述するS-DJ Xシリーズの後継に当たるモデルになっています。ただし、VMシリーズには前面に厚さ4mmのアルミニウム製フロントバッフルが取り付けられており、無駄な振動を抑えて正確で解像度の高い音を再生する設計。バッフルがアルミ製になったためか、低音を確保するためのバスレフ・ポート(ダクト、穴)が全面ではなく後ろにつくようになりました。

機能としてはS-DJ XシリーズにはなかったEQノブがついていて、低音が強めのDJプレイ向けのセッティングや、音楽制作時のためにはフラットな再生環境・・・といった具合に、用途に応じて音を調整できるのは魅力的。

前述の通りEQノブでDJ向け/楽曲制作向けとスピーカーの鳴りを調整できるため、これまでDJ向けに発売されていたS-DJシリーズと、楽曲制作向けのRMシリーズを統合したようなスピーカーになっています。

RMシリーズ

RMシリーズは2015年4月に発売されたスタジオモニターで、用途としては楽曲制作に特化しています。Pioneer DJは全体としてスピーカーの販売をVMシリーズに寄せてきているせいか在庫はやや少なめ。Amazon、楽天、サウンドハウス各所を巡回しないと在庫が無いケースも。

楽曲制作向けと銘打ってあるだけあって、音の定位がぶれないようにウーファー(低音発振部分)とトゥイーター(高音発振部分)を同軸上に収容する構造になっているのが大きな特徴。VMシリーズのようなアルミパネルはありませんが、トゥイーター部分の振動板にアルミニウムを採用しています。

S-DJシリーズ

2013年8月に発売されたS-DJシリーズは、2010年代から増えてきた「安価な普及型DJコントローラーを使って、部屋でDJを楽しむ」という新しいDJシーンの要請に応えるかたちで登場した、DJ向けのモニタースピーカー。

比較的安価に入手できるモニタースピーカーとしてとても人気になりましたが、現在VMシリーズへの移行中のためか市場の在庫は少なめ。とりあえず安いスピーカーを入手したいという方にはこちらのS-DJシリーズもおすすめですね。

DMシリーズ

最後に紹介するモニタースピーカーはDMシリーズ。DMシリーズといっても実際にはDM-40とDM-40BTのみ。またスピーカーのサイズが4インチと、他のシリーズと比較して一回り小さいことが特徴になっています。左右のペアで2万程度で入手できることから、これから始めるビギナーにはとてもおすすめ。加えて、DM-40BTはBluetooth接続に対応しているので、スマートフォンやパソコンから無線で音楽を鳴らすこともできます。DJ以外にも、普段から部屋で音楽をずっと流したいという方には、DM-40BTはコンパクトだしオススメ。

PAスピーカーラインナップ

XPRSシリーズ

Pioneer DJがPioneer本体から切り離される以前、Pioneerブランドを冠した業務用のPAシステムは、フラッグシップシリーズ「GS-WAVE Series」と多用途での展開を想定した「XY Series」の2つが存在していました。そこに2016年5月に登場したのがXPRSシリーズ。業務用とのスピーカーについては、現在はAlphaTheta株式会社による「Pioneer Professional Audio」というブランド名で展開されていますね。

このシリーズの特徴は業務用の「アクティブスピーカー」であるということ。つまり、Powersoft社製2400W出力D級アンプモジュールを内蔵しているので、アンプが不要。ミキサーから引っ張った音をそのままスピーカーから鳴らすことが可能になっています。とはいえそこまで大型というわけでもないので、フェスなどのイベント会場というよりも、小規模なクラブやカフェでの導入を前提として設計されたものになっています。

クラブだけでなく講演会なんかでの利用も念頭に置かれていて、プリセットされた4つのEQ「FLAT」「BASS+」「SPEECH」「WEDGE」があり、、スイッチを切り替えるだけで用途に応じた音の鳴りを変更することが可能。

ピュアリスニング用ではないので家で使うのは向いてないと思いますが、家でクラブっぽい音を聴けると思うと、楽しそう。

高コスパのおすすめスピーカーは?

Pioneer DJブランドで選ぶなら、VM-50でのお部屋 DJがオススメ

じゃあ結局何を買えば良いのよ?という方向けに軽く考えを書いておくと、お部屋でDJをする前提ならおそらくVM-50が最もコスパの良いスピーカー。予算が足りない場合はDMシリーズを選ぶもよし、もう少しだせるならスピーカーのインチ数の大きな、VM-70やVN-80を選ぶと良いです。

というのもこれまでの傾向からPioneer DJはラインナップを整理しようとしている意図が垣間見えるので、今後はS-DJシリーズやRMシリーズはディスコンティニュー、つまり生産中止になっていく可能性も高く、長期で使おうと思ったときに修理などの対応ができない可能性もあるのかなと。逆に書くと、型落ちモデルでも良い!という話であればS-DJシリーズを選んでも良いかもなと思います。

最後に:買い方に注意!

非常に細かい話ですが、スピーカーを買っても床に直置きしていたりしたら、良い音でモニタリングできません。スピーカースタンドやDJテーブルを使うなど、追加的な出費にもご注意ください!

 

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