中学校の頃、イギリスの中央銀行が(貴金属としての)金を大量に市場放出する(売却する)という話が新聞に載っていた。直感的に「ということは頃合いを見計らって底値で買えばお買い得じゃん」と思った。

当たり前だけど、中学生だった自分に金の保有口座をつくるアテなどなく、新聞の株価欄の端に掲載されている金相場を見て「あ、何%上がったな」とかを見ていて、「世の中の動きってすごいなあ」と初めて思った。

「経済は自ら自己実現的な成長や減退をするときがある」という理論を知ったのは、それから4年経って経済学部に入ったときだった。それは考えてみればとても簡単なことだ。「これからは景気が良くなる。景気が良くなって消費が進めば商品がたくさん必要になるはずだから、先を見越して工場の設備をアップグレードしておこう」とみんなが考えると、設備投資が進む。設備投資が進めばお金を貸し出す銀行の貸し付け残高が増えて、収益性が高まって、結果として債権も売れるようになって、株価が上昇。株価は経済の先行指標になっているから、結果として景気も良くなる。

ただ、本来は未来に先回りして、何か社会的・経済的利益を手に入れるというのは、とても難しい。

 

先日、担当クライアントに「この先5年で何が起こって、企業として何に対処すれば良いか」というお題をもらった。とても大きな会社からそういうことを言われるのは焦るけど、改めて勉強しようという気持ちもあって、いい機会なのでAmazonで買っていなかった本を、20冊ぐらい一気に買ってみた。

いくつか買った本のなかで一番興味深かったのは株式会社メタップスの社長が書いた「未来に先回りする思考法」。タイトルから感じる自己啓発臭が、とても胡散臭くて買ってなかったのだけれども、このタイミングで買って良かったなと思う。

ライト兄弟が初の有人飛行を成功させる数週間前に、ニューヨーク・タイムズは

飛行機の実現までには百万年から一千万年はかかるだろう

と書いたそうだ。一流のジャーナリストでも、未来を読みきるのは難しい。

WindowsOSのペイントソフトで初めて線を書いたとき、「将来は、有名な絵描きじゃない普通のひとだって、こんな風に絵を描くようになるはずだ」と思ったけど、誰も真に受けなかった。iPodを買ったとき、周りからはほとんどオモチャとしか思われてなかった。大学の頃に出会った外国人にFacebookを紹介されて感動したとき、日本人は皆「日本人の性格に合わない」と言っていた。それがFacebookの時価総額は今やトヨタ自動車の2.7倍だ。

 

「未来に先回りする思考法」でとても面白いと思ったのは、ロジックの行き先が単なる未来予測ではないところだ。佐藤航陽(メタップス社長)が書いている趣旨にものすごく賛成するんだけど、彼は

ただ単に未来はこうなる、というのを予測してもそれ自体に意味はありません。というのも、人間が考えうる範囲の内容は遅かれ早かれ実現するものです。むしろ経営的な観点からすると、「いつ実現させるべきか」が重要なのであり、GoogleやAmazon、Facebookはタイミングの読み合いをしているだけです。

と書いている。

 

一般的にはあまり知られていないけど、Googleは世界最大の在庫量をもつ広告メディアであり、Amazonは単なる通販会社ではなくデータ企業だ。そしてFacebookは戸籍という公的な保証制度を不要にできるほどの「人と人とのつながり」に関するデータを保有したプラットフォーム。

そして、いずれの企業も目指しているのは「宇宙」であり、この地球全体をネットワーキング化させることを直近の目標にしている(衛星を打ち上げて無料インターネットを提供する計画すらすでに実現しつつある)。僕らがそれを良いと思うか、監視されていると思うかは別として、あらゆる行動データはそういったプラットフォーマーに吸い上げられていくだろうし、実際便利だし、これからはプライバシーの概念すら変わっていくんだろうなあと思う。

手塚治虫がかつて「火の鳥」という漫画で描いた未来は、カタチは違えどほとんど実現していると言ってもいいかもしれない。排気ガスの出ない電気自動車。音声で話しかけるだけで部屋の電気やLINEメッセージを送ってくれるAIスピーカー、無人の工場。

最後に。僕が最近興味があるのは大体こんな感じだ。

  • 人工知能(AI)の適用範囲はどこまで広がるか
  • スマートフォンに変わるウェアラブルデバイスと、提供できるサービス
  • 仮想通貨が採用しているブロックチェーン方式の合意形成は何に転用できるか
  • 仮想通貨を媒介にしたCtoC(消費者 対 消費者)ビジネスはどこまで広がるか

誰かが広告コピーで書いたように「時代なんて、パッと変わる」もんだ。最近そんなことをすごく考えている。

 

勉強がてらに買った仮想通貨は相場変動が激しすぎて、いまだに終始は±ゼロである。やっぱり未来を読むことは難しい。

 

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