証券取引の用語で「Long」と「Short」という単語がある。

これは先物取引、つまり将来の見通しに関する契約を意味していて、日本語に訳すと「買い建て(Long)」と「売り建て(Short)」と言う。ある商品、例えば石油価格が中東戦争をきっかけに急上昇すると思ったら、Longポジション(将来この価格で商品を買います)の証券を購入すれば良い。実際に値上がりしたときに、Longポジションを履行して、相場よりも安価なコストで石油を調達し、相場の高値で売り抜けられる。反対に、サブプライム・モーゲージ債(住宅ローンを束ねて証券化した金融商品)が将来下落すると思ったのなら、そのShortポジションの証券を購入すれば良い。これを空売りと呼ぶ。

もしこれを読んでいるひとが、将来何かの価格が下がったりするという確証を得たのなら、千載一遇のチャンス。できる限りその商品をShort(空売り)することだ。僕ならそうします。

 

いつも週末に晩御飯を食べているお店では、普段からいろんな話題が出るのだけれども、絶対聞かれるだろうなあと思ったので、仮想通貨の暴落についてメモっておこうかなと思います。年明け早々、友だちみんなが入っているLINEグループのなかで、ある一人が「ココココインチェーーーーーック!」と投稿していたことですし。

 

※この記事には筆者の誤認識が含まれる可能性があります

※投資は自己責任でやりましょう

 

仮想通貨(Cryptocurrency)とは何か

Bitcoin(BTC)のざっくりとしたイメージ

仮想通貨という言い方、実は日本だけです。正式には、というか海外では“Cryptocurrency”、つまり暗号通貨と呼ばれています。なぜ暗号と呼ぶのかというと、暗号化技術をベースに、セキュアな通貨としての機能を成り立たせているからです。

Bitcoin(BTC)を例にとってものすごく大雑把に書くと、実はBTCというコインが送受信されるわけでは無くって、インターネットという大通りに、大量のBTCというコインが置きっ放しになっているいるようなイメージ。野ざらしになったBTCの下には「naka_chang所有分」と書かれてあって、これが僕がBTCを持っている証明となるわけです。

野ざらしになってるなら、書き換えれば盗めるのでは?という問題に登場するのが、暗号技術。所有権を書き換えるには、その署名を書き記した本人しか持ち得ないSecret-Key(秘密鍵)が無いと、書き換えることは容易ではありません。さらに言えば、naka_changが一緒にPodcastをやっているyavatomさんへBTCを譲ろうと思ったときに、署名を書き換えるのは僕ではなく、見ず知らずの交通整理員のおじさんたち。おじさんたちは、僕が「1BTCをyavatomさんへ譲ります」と宣言すると、ホントにそのBTCが僕のものなのかをチェックし、Secret-Keyのチェックを経て署名を「○月○日、naka_changからyavatomへ1BTCが譲られ、ただいまyavatom所有」と書き換えます。

この書き換え作業をするとき、大通りは交通整理員のひとたちに「円曲線上の離散対数問題」と呼ばれる数学の問題を解いてから署名を書き換えることをルールにしています。そして問題を解けたひと=署名を書き換えることに協力してくれた人には、手数料として新しいBTCがもらえます。これが暗号技術のベース。

実際には、大通りに交通整理員は集まっておらず、一人ひとりの交通整理員が別々の台帳を持っていて、それがインターネットを通じて一瞬で同期するようになっています。これが「分散台帳」という技術で、分散台帳はみんなで管理しているのと、順繰りに署名を書き加えていくのでブロックチェーンとも呼ばれていて、不正が起こりにくいシステムになっています。ちなみに交通整理員の人たちは、金の鉱脈を掘り当てるのにちなんで、マイナー(採掘者)と呼ばれます。

この暗号技術~分散台帳技術までのセットはとても有用なので、いろんな分野で使い勝手が良いということが分かってきています。特に、見ず知らずのひとにでも手数料を渡さえ渡せば、不正を働かずに社会に貢献する動機付けを生むことができるのは革新的。管理するシステムが「通貨的なもの」になればなるほど、マイナーさんに渡す手数料自体と近しい関係になっていくので、特にお金の管理とかこれでやると良いんじゃね?、ぐらいのところまで分かってきています。

 

Bitcoinの課題感

最初は論文の検証をやるためにひっそりと始まったBitcoinは、当初はうまく稼働していましましたが、マイナーや所有者、さらにその書き換え作業が膨大になるにつれ、問題が勃発してきました。システム上、大通りに車線の数を増やす想定をしていなかったので、渋滞だらけで送金できたもんじゃないと。使えないじゃなんと。そんなこんなでシステムをアップグレードするのに、全世界のエンジニアが働いています。

そして最大の課題は、「そもそもBTCって現実世界でいくらの価値があるのか」を最初に決めていなかったことです。完全に仕組みベースで開発していたので、その発想がそもそもなかったというわけ。そこに目をつけたひとが「BTCとドルを交換する取引所をつくろう」と思い立ってブレイクスルーします。価格が2017年に暴騰したとかの話は他所でチェックしてみてください。

 

オルトコイン(Altcoin)が必要なわけ

先人をきったBitcoinでしたが、いろんな課題があって実際の運用には向いてなさそうなことが分かってきたところで、仮想通貨の技術をもっと実運用ベースで開発すれば良いんじゃね?と気づいたひとが、システムを自作しはじめて生まれたのがオルトコイン(Altcoin、アルトコインと呼ぶひともいます)。

オルトコインの世界は面白くて、いろんな用途別に開発が進んでいるのですが、その急先鋒が「イーサリアム(Ethereum)」。イーサリムというプラットフォームでやるとりされる手数料はETH(イーサ)と呼ばれていて、これもいろんな取引所に上場しています。

イーサリアムの特徴は「スマートコントラクト」という仕組みで、コインの所有権をブロックチェーンに記入するだけではなく、契約書そのものを書き込むという技術をもっています。契約書は前述のBitcoin同じく改竄することが難しいので、イーサリアム上で契約を結んだ場合、厳格に契約条件を履行しなければ次のステップに進めません。

かくして国際送金向けとか、分散技術を使ってサーバーをつくってしまう試みとか、IOT(Internet of Things、物どうしのネットワーク化)に活用したりと、いろんな技術がトライ&エラーを繰り返しながら開発されています。Bitcoinの大通りの車線増やしただけのやつとかもあります。

 

仮想通貨はなぜ暴騰したり暴落したりするのか

仮想通貨が全体的に盛り上がるわけ

そんなこんなで、盛り上がってきた仮想通貨。2017年12月に1BTC=220万円まで高値がつきました。もともと価格をつけることを想定していなかったので、もっと高い価格で買いたいというひとがいれば、当たり前ですが価格はどんどん上がっていきます。もともとは、ピザ1枚が1万BTCだったのにね。

さらに言うと、多くの取引所ではオルトコインはBTC建てで買うのが前提になっています(最近ではETH建ても多い)。そのためBitcoinの値動きにつられて、その他のオルトコインも結構上昇しました。株でもそうですが、人間は上昇するものに乗っかりたがる傾向があります。特に仮想通貨の価格は変動が激しいので、利益をたくさん出したいと欲張る投資家、というか投機家にとっては絶好の材料です。

 

仮想通貨の価格問題

先に、Bitcoinは値付けをする想定をしていなかった、と書きましたが、厳密にいうと「いくらで値付けしたら良いのか分からない」というのが本当のところです。

一般的に、というか経済学的にモノの価値というのは需要と供給、そして金利で決まります。ただし、それは売り手と買い手のもっている情報量が対称的(隠し事が無いっていうこと)である、完全市場を想定した場合の話です。原価を算出するのであれば、マルクス経済学を借用して、投下された労働量から計算することも可能っちゃ可能かもしれません。ただし原価と市場価格は、意味が全然違います。売る時にいくらの手数料をとるべきか?という価値判断的な尺度が必要になってくるからです。マイナーたちの消費している電気代が莫大、という議論は市場価格とは実は関係無いと僕は思います。

 

適正価格という考えを捨てて考えるとどうなるか?

この議論に対処するには見方を変える必要があります。それは「そもそも適正価格なんてない」と割り切ることかなと僕は考えています。

ただし、上がり続けるか?という話でいうとそれも違っていて、値付けのメカニズムがバブル化しているか判断することは、ある程度可能です。最近では、TVでもいろんなコメンテーターが「仮想通貨はかつてのチューリップバブル(オランダで、その昔チューリップの球根に値付けされる先物価格が暴騰&暴落した話)よりも危険だ」というひとが増えてきました。

古くはオランダのチューリップバブル、日本の不動産バブル、アメリカの2000年ITバブル。いろんなバブルがありましたが、TVに出ているコメンテーターは暴騰率でバブルか否かを判断しているみたいですが、それもちょっと違うかなと思います。Amazonの株価なんて、バブルよりも何十倍も成長してますよ。

 

バブルか否かを見分ける

市場の価格とは、売り手と買い手の合意できる価格なわけですが、先に書いたとおり、前提条件として「売り手と買い手のもっている情報量が対称的(隠し事が無いっていうこと)である」ことが求められます。これが大きく乖離すると、価格の決定権が売り手買い手いずれかに集中してしまい、それがバブルの種になっていきます。

ある市場における取引商品、今回でいうと仮想通貨の複雑性が増すと、買い手は高度なリテラシーが求められ、求められる能力に見合わない参加者が増えます。リテラシーは数値化することが難しいですが、市場の複雑性を簡単に見分ける方法があって、それは(潜在的なものも含めた)詐欺件数の増加です。

詐欺という行為が成立するのは、買い手よりも売り手の情報量が上回っているときのみに発生する現象で、買い手が「確かに上がるんだろう、ニュースでも言ってるし」と信用しやすい状況になっている最たる例です。過去に起こったすべてのバブルで不動産詐欺やIT関連株の上場詐欺などが多発しています。要はスタバやドトールで、明らかに怪しい仮想通貨投資話に乗せられてるひとが増えてきたら、これバブルの証拠です。

ただし留意してもらいたいのは、今が仮にバブルだったとして、1BTC=200万円とかっていう価格自体がバブルか否かを判断する指標ではない、ということ。事実、AmazonやGoogle、Facebookの株価は以前よりもずっと高いし、ユーザー規模からすれば妥当な金額です。重要な問題は「情報の非対称性が大きくなっているか否か」なのであって、価格それ自体やその上昇率にバブルか否かを求めるのは本質的ではありません。

 

1月からの暴落について

というわけでやっと本題まできました。ぐんぐんと高値を更新し続け、12月に220万円にタッチした仮想通貨のドンBTCですが、1月からはかなり下げていて、この記事を書いている2/2時点では93万ぐらいまで落ち込んでいます。

ITバブルでは100分の1になった株価もあったりするので、半値になるぐらいはまだ序の口かもしれませんし、これから地獄が待っているのかもしれません。1BTC=80万円ぐらいで底打って反転するかなーとか個人的には思ってますが。あれだけ皆が上がると期待して買っていたBTCですが、これだけ落ちてくるのにも、もちろん理由があります。

 

国際的な規制強化の高まり

1つ目は規制。価格の変動の大きさを、証券業界ではボラリティよ呼びますが、ボラリティの激しい市場では投資家が利益を生み出すのと同時に、損をするひとも大きくなります。

政府としては、自分の国で損をするひとが増えてしまうとGDP(国内総生産)が減ってしまうので、困ります。特に金融セクターは国内の大きな産業であるため、GDPに与えるダメージは多大です。なので国としては適正に管理された市場でそういうのはやって欲しいと。よく分からん業者の取引所で、一人ふたり損するのは構わんが、数十万人損されても困ると。

そんなこんなで日本の場合は、仮想通貨の取引所は認可制になりました。悪いひとたちの資金洗浄にも使われないように、ちゃんと個人の本人確認をとっているかとか、資金決済法で求められる要件を正した会社になってるかとか。この整備、日本は世界にかなりリードしており、海外からの資本流入も期待でき、うまくいけば今後の産業としての成熟が予想されます。

いっぽうよその国ではどうかというと、アメリカを除けばどちらかというと、そんな値付けの方法もちゃんとしてないもの取引するなよと、悪い奴らに利用されるだけだろと、いうことで世界で一致団結して取り締まっていきましょうぐらいのひともいたりします。特に一攫千金を夢見るひとが多かった韓国では、取引規制の方向性が政府や行政内で右往左往した結果、若者から政府へ三行半がつきつけられる自体になるまで混乱しています。

規制してしまうと取引量が減ってしまうので、当たり前ですが価格には下げ圧力がかかりますよね。

 

コインチェック騒動

ただでさえ規制問題でごたごたしていたところにぶち込まれたのが、このコインチェック騒動。

国内有数といわれていたコインチェックという取引所からNEMというプラットフォームの通貨XEMが大量に盗まれてしまいました。インターネット上の話なので、ハッキングされて不正送金されてしまったと書くほうが正確ですね。その額なんと、当時の交換レートで580億円分。約5億2300万XEMなので、今のレートで1XEM=61円ぐらいですから、320億ぐらいか。

んで、日本は取引所は認可制なんですが、このコインチェックはまだ認可がおりていなかった「みなし業者」であったことから、金融庁の指導責任も問われないように、業務改善命令を出したり、改善報告書を待つ前に立ち入り捜査したりと、お祭り状態となっています。

ニュースではこれをきっかけとしてBTC価格が暴落なんてことを語るひともいます。ただし、こんだけ盛り上がっているのは日本だけで、BTCの値が大きく下げたのは、もっと超弩級の疑惑。それがテザー問題です。

 

テザー問題について

テザーとは何か

「テザー(Tether)」というのは会社の名前であり、テザー社が発行する仮想通貨の名前でもあります。その仮想通貨Tetherは1ドルと等価であるとされ、「USDT」というシンボルのもと、実勢価格も1ドル取引されています。

なぜUSDTを使うのが便利なのか?それはお金では無いからです。仮想通貨の取引所には得意不得意があり、取引所によって取り扱っている仮想通貨には違いがあります。一般的にはBTCで購入しますが、価格変動の大きな場合、BTCで取引所間を送金するのはリスクがあります。なんたってBTCの大通りは渋滞しているので、送金を待っている間に値段が変わってしまうリスクがあるからです。

ということはドルで送ってしまえばいいじゃん、というとそうでもありません。取引所は数百も無いためサービスを提供している国をまたいで、別の国の取引所に送金したいときも発生します。国を超えて送金する際、ドルを使ってしまうと国際送金になってしまうため税金や手数料も高いのと、国際間決済の銀行帳簿を通さなくてはなりません。これでは面倒。

そこで登場したのがUSDTです。USDTはテザー社の発行するUSDTを取引所が買い上げ、ドルのように使えるのに、仮想通貨という体裁をとっているため、すぐに送ってすぐに使えます。

 

テザー社に関する疑惑

USDTはドルと等価なので、1USDT=1ドルという信用のもと、皆が使っています。取引所がUSDTを買い入れる際、テザー社はそのお金を銀行に預けてるので大丈夫だろうと。

ただしこれはあくまで、そういう信用のもと成り立っているという話。テザー社の規約をよくよく読んでみると、テザー社は流通してるテザーを買い上げたり補償したりする義務は一切ありません。なんだよそれ、というレベルで規約に書いてあります。この規約に気づいたひとは、昨年の夏ぐらいからずっと「USDTってほんとに大丈夫なん?」と言い続けてきました。また、香港にあるBitfinexという取引所とテザー社の代表幹部連中は同じであることに疑問を呈する声も上がっています。

Bitfinexという取引所は過去にコインチェックと同じようなハッキングにあったこともある取引所。

・Bitfinex Reports Security Breach, Bitcoin Price Slumps(Cointelegraph)

Bitfinexは、その補填額を Bitfnex上で使えるトークン発行によって強引に乗り切ったことでも有名です。乗り切った事例としては、この会社ぐらいではないのかな。

・Bitfinexが資産を失ったユーザーに対して7,000万ドル分の返済を行う可能性(Cointelegraph)

・Bitfinexの”損失額分配負担案”は法廷で支持されるか(Cointelegraph)

まあでも、預金残高に発行料と同額のドルがあれば問題ないのですが、その後、監査法人であるフリードマンという会社との契約を打ち切り、公表をうやむやにしているところも、疑惑に影を落としているといったところでしょうか。

・テザー社が監査法人と関係打ち切りの噂でUSDT巡る疑惑高まる(Cointelegraph)

さらにここにきて、謎の特報も入ってきています。

 

1000xによるレポートでテザーとBTC価格に疑問が

1000xを名乗るグループが、USDTの発行タイミングと、BTC価格の上昇タイミングの間には不自然な相関関係があるというレポートを発表しました。元ネタを乗せている記事があんまりないので、URLも紹介しておきます。ちなみに中身まだ読んでません。

・www.tetherreport.com

これを発表したのは元Googleの社員らしいです。本当かどうかは分からないが。スライドはこちらから見れます。

・http://www.tetherreport.com/slides.html

消えてしまうかもしれませんが、貼っておきます。

このレポートではUSDTが発行される際にBTC価格の上昇が見られるとしています。これはつまり、USDTを発行した直後にUSDT建てでBTCを買い上げ、価格を釣り上げているのでは?というロジックのもとになっています。

・【テザー疑惑】新規USDT発行直後にビットコイン価格上昇の傾向 匿名レポートが市場操作の可能性指摘(Cointelegraph)

そのほかにも、USDTを発行 → Bitfinexがお買い上げ → USDTでBTCを購入 → BTC価格が上昇、という流れをつくっている間に、レバレッジをかけて(信用取引)BTCのLongポジションをとれば、上昇した価格分だけお金儲けもできるのでは?という疑惑。

 

追い打ちをかけるアメリカ先物取引委員会からの召喚状?

さらに追い打ちをかけるように、ブルームバーグが31日(日本時間)未明、匿名を条件にタレコミがあったことをニュースとして報道します。その内容は、アメリカの先物取引委員会(CFTC、Commodity Futures Trading Commission)がBitfinexとテザー社に対して、召喚状を出したというもの。

記事はこちら。12月の6日の召喚状を出したそうだ。

・U.S. Regulators Subpoena Crypto Exchange Bitfinex, Tether(Bloomberg)

これが本当だったら先物取引委員会から捜査されているということになる。これは大変だ!というのが、今起こっている騒ぎなわけです。

 

タイミングの良すぎる告発

そういうわけで、今のBTC価格は不正に操作されていたものである可能性が高いと考えるひとが、一気にBitcoinから離れ始めた。

しかし、冷静に考えてみるとどうだろう。Bitfinexは香港の会社だし、テザー社は台湾の会社だ。アメリカの先物取引委員会が、仮想通貨市場に前のめりだったとしても、政府の管理権限のない外国の取引所に召喚状を出すなんてことがありうるだろうか?調査しているということは分かるけど、だったら捜査員が香港や台湾で調査する話のような気もする。

実際、上のような疑問をTwitterで投げかけているインフルエンサーもちらほらいます。

ビットコイン基金の創設者でもCharlie Shremにいたっては、「みんなパニックを起こしてるけど、考えてみろ。もしテザーをもっているのなら、一番確かな方法は、それを使って(手放して)何か仮想通貨を買ったほうが良い」とすら発言している。

 

魑魅魍魎だらけのニュース

仮想通貨は証券では無いので、インサイダーという概念が薄い。ただし前述の通り、適正な価格決定メカニズムが作用しにくいので、それが正しいものであるか否かはさておき、流通する情報に流されやすい。

過去にもこういうナイスタイミングなBADニュースというのはあって、中国が仮想通貨に規制をかける!という話も今にはじまったことでも無く、相場に下げ圧力がかかったときにタイミング良く過去のニュースが引っ張り出されてパニックが起きている。

で、ちょっと気になってこのレポートを発信し始めたのは誰かTwitterで検索したみたんだけど、出てくる限り一番古いツイートはこれだった。

私より賢い人たちがここにいます。というのはちょっと意味深ですね。

自分がこのレポートを書けるぐらい頭が良かったらどうするか?絶対にShortポジションBTCの空売りをかけるよね。というわけで調べてみた。

BTC/USDのShortポジションを見てみると、24日以降はむしろ下がっている(大きな空売りは無さそう)んだけど、レポートの情報が浸透し始めた25日以降に急上昇(BTC価格が下がる方に賭けている)。ただ、上昇した後に一服して横ばい。

その後、Bloombergが記事を出したのがアメリカ時間(おそらく東部標準時)で、2018年1月31日 2:52。日本時間で31日の16時。この後の動きをみると、むしろ直前までのほうが上昇しているようだ。

というのを見ながら、個人の妄想の域を出ない範囲で書く。レポートをつくったひと自体は善意で情報提供したんだろうけど、結果として下げ圧力に加担したかたちになった。おそらくテザー社のUSDTも限りなくグレーなのではないか。そしてその下げ材料をもっと利用したいというひとが、空売りをかけた後に絶好のタイミングでBloombergに匿名でタレこんだ。ただしその話は少し盛ってあって、アメリカの先物取引委員会が調査しているというのは本当だけど、召喚状を出したというのは脚色。実際には調査のために質問状か何かを送付はしてる、みたいな感じなのではなかろうか。

アメリカ本国のロイターズには、規制当局が調べている件については記載があるものの、当局はコメントを控えたとある。過去Bitfinexに対して、違法取引と先物取引業者としての登録を怠ったとして罰金を科したことがある書かれてあるけど、これはアメリカとの顧客がいた場合はガンガン突っ込んでいきますよ的な話なのかな。いずれにせよ真実は分からない。

・U.S. regulator subpoenas cryptocurrency platforms Bitfinex and Tether(REUTERS)

 

The Big Short

とまあそんなことを考えていて、結論として「あ、これって映画の『The Big Short』みたいじゃね?」と思ったっていうのを書きたかっただけです。

アメリカの証券取引所で取り扱われているモーゲージ債が、不正な格付けと金利変更で債務不履行になり、最終的には焦げ付くだろうということに気づいた証券マンが空売りを始める話。「The Big Short」の「Short」は弾けるみたいな意味ではなくって、空売りという意味の「Short」です。

実際その予想は的中し、この暴落をきっかけにアメリカはリーマン・ショックへと突入。数十万人の失業者と家を失ったホームレスが生まれる大問題になっていきます。この映画、すごく面白いのですが、金融機関のシステムの誤りに気づいたものの、彼らがとった行動は世紀の空売りだったというところ。誰が善人で誰が悪人だっていう話では全然無いんですよね。結局儲けてんじゃねーかよ、的な。

ブロックチェーン技術に関して言うと、あと1年か2年ぐらい経てば、当たり前な技術にはなっていくだろうから、個人的には期待していますね。まあ、参考にでもなればシェアしてください。それではまた。

 

・仮想通貨「テザー」の疑惑が本当なら、市場が崩壊するかもしれない──信頼性を損なう“事件”が続発(Wired)

・Goxヤバいと噂のBitfinexからビットコインを出金しようとしたら・・・?

・Tetherとは何なのか?その仕組みと陰謀説と今後の展開について

 

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