映画では、よく深夜のクラブで事件が起こる。薄暗い階段を降りていった先には、爆音のサウンドが轟くフロアのなかを、露出しすぎのお姉さんや、怪しい兄ちゃんがうろうろしていて・・・といった感じだ。

実際治安の悪いエリアのクラブが犯罪の温床になっていることは、否定できない事実で、高校の頃に僕がDJをやっていたクラブでは、店や常連のひとは良いひとばかりだったけど、ごく稀に変なひとも紛れこんでいて、MDMAでぶっ倒れたひとは見たことがある。間近にオーバードーズ(薬物摂取過多で意識を失ってしまうおと)してしまったひとを見るのはとても後味が悪い。そのときは誰かが病院に連れて行ったけど、どうなったかは知らない。クラブはその後、健全性を保つために郊外に引っ越して、IDチェックも厳格になった。本当にそうして良かったと僕はいまだに思っていたりもする。

クラブカルチャーというのは、本来とても少数のための密かな楽しみだったわけだけど、それが大衆化されると、それはそれでいろんな問題がある。サマソニのような都市型フェスが大規模化していくにつれて、若いパリピのノリがきつい・・・と言っている友達は意外と多い。僕個人としては、それは仕方がないことかなあとも思うけど。

パリピというと、日本だけの現象のように聞こえるわけだけど、実はパーティーカルチャーの本場、アメリカのほうがもっと凄い。アメリカの大学生の間では「スプリング・ブレイク」という春休みの期間に遊びまくる!というなんともアメリカ的なコンセプトの学生休暇があって、大抵はフロリダのビーチに皆が大挙して押し寄せる。海外で「Spring Break」と検索すると、すごい。本当にすごい。

もともとはどっかの大学生が部活の合宿を開いていたというのが、「Spring Break」のはじまりだと言われているけど、そんな真面目な大義名分はどこかへ吹き飛んでしまうのは、日本の大学サークルの合宿が、ほとんど遊びに出かけているだけなのと変わらない。ただ、アメリカの場合は社会現象としての規模がやっぱりデカイ。全米からフロリダ行きのバスが次々と発車していき、続々とビーチ横のホテルに集結していく。

3月の上旬から中旬にかけて、たった2週間ほどのお祭り騒ぎだ。でも集まる規模はなんと25万人。ナンパしたり、されたり、一晩だけのセックスを目当てにするひともいるだろうし(というかほとんどそれが目的のように見えるが)、勢いで童貞やバージンを卒業しようと思っているひともいるかもしれない。あと、襲ってでもセックスしてやろうと考える悪い奴も、おそらくいるだろう。これだけひとが集まれば、ドラッグを売りにくるディーラーも、売春婦を斡旋するポン引きも、パーティーの騒乱に興じて強盗を企むやつも、全員集まってくるのは目に見えてる。

そうした春の騒乱ともいうべき「Spring Break」を題材にした映画が「スプリング・ブレイカーズ」だ。監督はハーモニー・コリン。4人の女子大生がスプリング・ブレイクにフロリダへ行った結果、どんどん悪事に染まっていってしまうくというシンプルなストーリーだ。

ごく普通の女子大生がフロリダに行く話だと思って見てたけど、冒頭から「こいつら全然普通じゃねえじゃん」という非常にスムーズな流れでフロリダに到着。パーリナイにどんどん足を突っ込んでいく過程で麻薬の売人と意気投合してしまうという話。

僕はこういう「根がダメというか本性がヤバイやつが、なんやかんやあって、やっぱりヤバイ展開になっていく」というストーリーが非常に好きで、同系統でいうと「ナイト・クローラー」とかもそうなんだけど、「あ〜、どんどんヤバくなってってるわ〜」という流れがとても良い。頭悪そうな曲ばっかりのサウンドトラックも完成度が高いし、これは買いです。

長い休暇はひとを解放的な気分にさせるし、旅行会社はいつも気分転換に長距離の旅行を勧めてくれるので、現代人はお金さえあればリフレッシュの手段には事欠かない。ただ、どこに向かって解放的になるかというのが問題で、スプリング・ブレイクの場合は一言で言うと、まあフリーセックスのことだ。

スプリング・ブレイクの期間中、ビーチ沿いのホテルではそこら中で男女の営みが行われていて、それは例えば、みなグループでフロリダに行くわけだから、グループ部屋のなかでもやりたい放題。ビーチのダンスフロアのトイレなんて、それはもうピンポイントなナンパスポットになるべくしてなっているみたいな感じ。

Netflixには、スプリング・ブレイクとフロリダのビーチがもたらしたこの偉大なセックス革命について取り上げたドキュメンタリーがあって、結構面白い。「LIBERATED: THE NEW SEXUAL REVOLUTION」というタイトルだけど、邦題では「フリーセックス -真の自由とは?」となっている。初めてビーチに来て、パーティーで尻振りコンテストなんてものに出場する(そして後悔するひともいる)エピソードなんかも登場する。

パーティーカルチャーのなかでは、女性が声をかけられることは、見初められたことを意味するので、それはある意味名誉ではある。声をかける男性のほうだって、声をかけた結果、一晩でもセックスに持ち込むことができたのなら、それは(動物的な意味だとしても)名誉ある勝利を意味するんだろう。認めるとか、認められるとかいうこの奇妙な構造は、とてもアメリカ的なもののようにも感じるけど、まあまあ日本でもある気はする。数人でクラブにきている若い男の子とか、「声かけてみろよ」「やめろよ〜」はたまた「脱げ脱げ〜」みたいな笑。たまに見かけますよね。

好きとか愛してるとか、そういうものから離れて、純粋にセックスを楽しむという思想は、自ずと行為自体のゲーム化を招かざるを得ないのが難しいところだ。少なくともスプリング・ブレイクのフロリダを見ていると、セックスを楽しんでいるわけではなく、セックスという名前がついたゲームを、25万人総出でやっているに過ぎない(もちろん純粋にパーティーを楽しみにしているひともいるんだろうけど)。そしてそれがもたらす最悪の事態は「このゲームに同意していないひとを巻き添えにしている」ということだ。自由に誰とでもセックスをするというフリーセックスのカルチャー自体は否定しないけど、この場所に入ったら女性は強引に犯されても仕方がないですよ。ということとはわけが違う。

そしてある年、ビーチで一人の女性が数人の男に強姦される事件が起こった。周囲には何百人ものひとがいたのに、誰も止めることなく事件は起こったそうだ。事態を重くみた現地の警察は、警察による警備を厳重にして、声明も発表した。

大規模化していくパーティーカルチャーで、集団の自制心というものを引き換えに、僕たちは何を手に入れたんだろうか?それは絶対に楽しいひとときでは無かったはずで、爆音が流れる素敵なダンスフロアが好きだった僕としては、そんなことを考えるにつけ、なんとなく悲しい気分になってしまうのだ。

 

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