かつて強烈に記憶に残っていたはずの映画が、久しぶりに観たらそこそこだった、なんてことはよくある。
僕にとってのイギリスという国は小学校の頃に観た「Trainspotting」と、深夜映画で目にしたイギリス映画だったわけなんだけれども、「Trainspotting」はその後何度も繰り返し観たのに比べて、もう一本の映画のタイトルをずっと思い出せないまま30を過ぎてしまった。
思い出せないほうの映画は複数の短編がロンドンの地下鉄を舞台に錯綜するようなもので、僕が一番覚えているのは車両強盗したカップルが本来電車が来るはずのないプラットホームから、不思議な地下鉄に乗り込む話だ。ネタバレは避けたほうが良いと思うので書かないけど、その他の短編もストーリーのテンポ感も心地よくって、なんとなくオシャレな映画だなあと思った記憶はある。
ちょうど1年前、ふと気になって強盗カップルの話をAmazonで検索してみたところ、DVDが数百円で売られていて、勢いで買ってしまった。その名もずばり「Tube Tales」。チューブとはロンドンの地下鉄のこと。この作品集はいろんな監督がロンドンの地下鉄をテーマに短編を制作した企画もののオムニバスになっているというわけだ。
作品のなかにはユアン・マクレガーやジュード・ロウが監督を務めた作品もある。が面白いことに俳優監督作品はわりとアーティスティックな傾向。エンタメしてるのはその他のものが多いみたい。
記憶のなかでの映画ではものすごくスタイリッシュな感じだった気がするのだが、BGMのせいかやっぱり少し色褪せて見えたきもします。予告編映像を再生すると分かるけど、FatboySlimみたいなビッグビートや、アンセムみたいなジャンル。
https://www.youtube.com/watch?v=BCY_Zjqfc80
DVDパッケージにはロンドンの地下鉄マップも同封されていました。映画のカットで描写されるロンドンの地下鉄入り口はとても汚くて、でもなんだか憎めないのは、地元の駅裏の汚さにそっくりだからかもしれない。キセル乗車を取り締まる検札官たちだけが悪者のように扱われていたり、良くも悪くも90年代半ばまで続いた不況を、若者視点でこじらせてる感じはとても良かった。
こういうちょっと気の利いたことしちゃうのも90年代って感じがしますね。