バンドとは、家族のことである

ロックバンドに限らず、ミュージシャンというのは大抵、アルバムを制作すると、そのなかの1~2曲をシングルカット。盛り上がりが最高潮のときにアルバムをリリースしたら、後はライブツアーで国内や世界を巡業していく。バンドのメンバーと一緒に過ごす時間はパートナーよりも長いというひとは多いはずで、だからバンドのことを「家族」だと公言するひとは多い。そしてそれは、インディーズバンドから、世界的に有名なバンドに至るまで変わらない、普遍の原理のようなものだと思う。

70年代から80年代にかけて世界から称賛された稀代のバンド「Qween」も、その例に違わないロックバンドとして挙げることができるわけなんだけど、彼らを描いた映画「Bohemian Rhapsody」が素晴らしいと感じたのは「音楽の映画であると同時に、音楽がとりもつ「家族」についての映画だったというところだ。

映画「Bohemian Rhapsody」は、Qweenのリードボーカルを務めていたフレディ・マーキュリーを中心に、バンドが誕生してから仲違いしていき、和解した後にチャリティライブイベントLIVE AIDに出演。全世界からベストアクトと称賛されるパフォーマンスを披露するまでの過程を描いた作品だ。

LIVE AIDでのセットリスト

LIVE AIDは1985年の7月に開催されたチャリティライブイベント。YouTubeには世界で生中継された映像のアーカイブがUPされていて、これだけでも一見の価値がある。

QweenがLIVE AIDで披露したセットリストは出演アーティスト中最多の6曲。

1985年に行われた20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴエイド」では出演アーティスト中最多の6曲を披露、そのパフォーマンスの質の高さにロンドン会場のヘッドライナーを務めたエルトン・ジョンがバックステージで悔しさを顕にし地団駄を踏んだとされる。クイーンの圧倒的なライブは、スタジアムの観客やライブが中継された国々のファンからも絶大な反響があり、世界各国でクイーンのアルバムがチャートを急上昇した。

セットリストはこちら。

1Bohemian Rhapsody(1975)
2Radio GA GA(1984)
3Hammer To Fall(1984)
4Crazy Little Thing Called Love(1979)
5We Will Rock You(1977)
6We Are the Champions(1977)

フレディにとってのBohemian Rhapsody

Bohmianとは流浪の民つまりロマのことで、Rhapsodeyというのは異なるメロディーを織り交ぜながら叙事的な内容を表現するジャンルのことを指している。

アフリカのザンジバルで生まれ、インドで幼少を過ごしたフレディ・マーキュリー。家族とザンジバルに戻るも、ザンジバル革命によって身の危険をさらされ、家族とともにイングランドへ避難したその経緯は、さながらロマ(Bohemian)のようでもある。

この曲でフレディはしきりに「ママ」と呼びかけながら、懺悔のような言葉を繰り返しているわけだけど、劇中ではその家族との関係性は必ずしも良いものとは言えない。

Mama, just killed a man
(ママ たった今、人を殺してきた)
Put a gun against his head
(あいつの頭に銃口を突きつけて)
Pulled my trigger, now he’s dead
(引き金を引いたらやつは死んだよ)
Mama, life had just begun
(ママ 人生は始まったばかりなのに)
But now I’ve gone and thrown it all away
(僕はもう駄目にしてしまった)
Mama, ooo
(ママ ああ ママ)
Didn’t mean to make you cry
(ママを泣かせるつもりじゃなかったんだけど)
If I’m not back again this time tomorrow
(明日の今頃になって 僕が戻らなくても)
Carry on, carry on, as if nothing really matters
(今のままで生きていって、まるで何事も無かったかのように)

ゾロアスター教という宗教、ここでは「ひととしてあるべき道」を退屈に繰り返す父親。優しいが自分を理解してはくれない母親。そんな家族から離れたいという思いから、本当の名前であるファルーク・バルサラという名前を隠し「フレディ・マーキュリー」と名乗り始める。

バンドメンバーと彼女が、家に来て皆で誕生日を祝っているときでも、フレディは自分の出自を隠そうとして、ごまかすために歌を歌い始める始末。

長い時間がかかった後、父とわかり合うために抱き合うシーンはとても感動的だ。しかもこのシーンは、父への想いを伝えると同時に、自身がゲイだと半ばカミングアウトしながら、さらに父の教えである「善き行い」をしようとチャリティに参加することを表明するシーンになっている。

この家族の大切さというのを気づかせる鍵となるのが、バンドとの不和と和解、という構造になっていて、つまりQweenというバンドが紆余曲折を経て成長していくことで、フレディという人間が自分ひいては周囲を肯定することができるようになる、という流れになっているところも王道ながら素晴らしい。

実際にはLIVE AIDの時期、Qweenは解散寸前だったというよりは、バンド自体の人気に陰りが見えてきて落ち目だったというニュアンスのほうが正しかったり、フレディ・マーキュリーがエイズであることをカミングアウトするのは時期が違っていたりするのだけれども、映画としてのリアルさという意味では、その違いは大きな意味を持たないと僕は思う。

熱気まで再現する熱演

何より最高だったのは、ライブシーンがとてもリアルだったこと。海外メディアが「フレディが憑依している・・・」と評した数々のライブシーンはとてもリアルで、物語が入ってこないひとでもロックとはこういうものだという理解を得られるんじゃなかろうか。

最後のLIVE AIDも実際の映像と比べてみても、とても面白いのだけれど、ピアノに置かれているビールや、カメラアングルまで過去映像をトレースするぐらいの再現度の高さ。

これまで音楽伝記ものの映画って、けっこうファン向けにつくられるものが多かったように思うけど、この映画を通じてQweenのかっこよさに初めて触れるひとも多いんだろうなあと思うと、映画そのものもさることながら、このムーブメント自体の凄さを改めて考えさせられるなあと感じます。

バンドの友情と青春を描いた映画作品としては「Almost Famous(あの頃ペニー・レインと)」が僕はとても好きで、前にも紹介したことはあるけど、ライブシーンをきちんとカタルシスとしてもってくる映画という意味では、意外とこういう構成の映画は見たことなかったかも。

サウンドトラック

映画のサウンドトラックはインスト楽曲ではなく、劇中で使われたQweenの名曲がコンパクトにまとめられていて。LIVE AIDのライブ音源も入ってて、オススメ。

簡易年表

参考までにLIVE AIDで歌われた楽曲のリリース年をまとめてみました。

1971年 2月ベーシストであるジョン・ディーコンが加入し、Qeenが正式なメンバーとして結成
1975年 10月31日シングル「Bohemian Rhapsody(Vo.フレディ・マーキュリー)」
1975年 11月21日アルバム「A Night at the Opera」
1977年 10月7日シングル「A面:We Are the Champions(Vo.フレディ・マーキュリー) / B面:We Will Rock You(Gt.ブライアン・メイ)」
1977年 10月28日アルバム「News Of The World」
1979年 10月5日シングル「Crazy Little Thing Called Love(Vo.フレディ・マーキュリー)」
1980年6月30日アルバム「The Game」
1984年 1月23日シングル「Radio GA GA」(Dr.ロジャー・テイラー)
1984年 2月27日アルバム「The Works」
1984年 9月10日シングル「Hammer To Fall(Gt.ブライアン・メイ)」
1985年 7月13日チャリティライブ「LIVE AID」出演
 

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