複合的なプロモーションでは、イベント施策を実施されることも多い。
TV-CMや屋外広告、ウェブ広告といった一般的な広告手法は見せて終わり。それは実際に手に取ったり、試着室で着替えたりすることができないので、広告主は生活者とコミュニケーションをとろうと、イベント施策を盛り込む。駅スペースやショッピングセンターでは、趣向を凝らしたイベントが催される。特にアパレル企業は、コンビニに置いてあるような商品とは違って、店舗に行かないと商品を購入するタイミングをつくることが難しいので、大企業になればなるほどブランディング目的のイベント施策を定期的に実施する。アパレルブランドがよくやるイベントは、お店をつくってしまうという「ポップアップストア」だ。
ポップアップストアはブランド体験を優先するので、大抵は商品を売るよりも何かアクティビティに参加させるものが多い。最近の国内事例だと、SK-Ⅱののブランドショップ「Future X」はとても面白かった。
原宿に期間限定でオープンしたこのストアは、画像解析技術で自動的に肌診断を行うこともできる。
最先端技術を使ってブランド体験をさせるのは、パブ的にも映えるので、よくありますね。
僕の好きなアパレルブランドの事例だと、The North Faceはちょこちょこ面白いポップアップストアをつくってる。以前話題になったのは、韓国のストアで実施されたポップストア内のドッキリ。
景品をゲットしようとすると、床が落ちていき、壁に設置されたクライミングウォールを登らなければ、ゲットできないというしかけ。これは楽しそうですよね。
そして今回The North Faceが新しく開設したポップアップストアは、なんと標高2000m以上の山の上。「Pinnacle Project(頂点計画)」とされたこのプロジェクトは、山の上にポップアップストアをつくってしまおうというプロモーション。
リリースではポップアップストアって書いてあったけど、実際には登山家たちのアーカイブが展示してあるみたいですね。
POPPING UP AT 2100M
2100mに誕生
Located in Val San Nicolò, in the Italian Alps, the pop-up is reachable only on foot.
イタリアアルプスのVal San Nicolòに位置する、徒歩でしかたどり着けないポップアップストア。
A two-hour hike awaits those who want to get their hands on the iconic collector’s pieces. The pop-up will be open for eight days, giving fearless explorers the chance to see and feel the Athlete Archives.
2時間のハイキングが、象徴的なコレクターズアイテムを手に取ってみたいと思う君を待っている。ポップアップストアが開かれるのは8日間。恐れることを知らない探検家に、アスリートたちのアーカイブを見て、感じるチャンスを用意します。
特設されたスペシャルページを見てみると、すごいインスタ映えしそうなポップアップストアの写真がたくさん掲載されていて、残り時間とともに公開されています。
ウェブサイトでは店内の雰囲気は少ししか分かりませんが、ちょっとした展示会のようになっていますね。
このプロモーションがとても面白いのは、標高2100mにポップアップをつくってしまうということよりも、「この場所に行くこと」そものもがブランド体験になっているということだ。
富士山の標高が3700mだけど、富士山は5合目ぐらいから登るので、2100mというと富士登山より正直そこそこキツイだろうなあと思います。ただ2時間ぐらいのハイキングってことは、この場所も途中から登山できるのかもしれない。
商品を手にとらせる場所だけを考えるわけじゃなく、そこにたどり着くまでの過程をブランド体験と定義するのはとても上手い。アウトドアブランドならではだなあと思う。