MIDIというのは「Musical Instrument Digital Interface」という名前の略称で、電子音楽の制御に欠かせない全世界の統一規格。MIDI信号をやりとりするケーブルを接続することで、複数の電子楽器のスタート/ストップタイミングを同期させたり、統一されたボリュームコントロールが可能になる画期的な規格だ。

その設計に貢献したとされる、ローランド社の創業者である梯郁太郎は、個人としては初のグラミー賞テクニカル・グラミー・アワードを受賞している(2013年に第55回グラミー賞)ことからも、音楽業界では重要な規格であることがわかる(ローランドの音楽機材の歴史についてはこちら)。

そのMIDI規格は、MIDI Manufacturers Associationという国際団体によって管理されているのですが、そのMMAからひっそりと、しかし重大な告知が。なんと、MIDI規格が大きなアップデートを控えているらしいというのだ。

 

MMAからのリリース

このアップデートは大容量化、複雑化していく音楽に対応するための、とても大きなアップデートになる模様。それに伴い、これまでの顔ぶれとはまた違ったメンバーが、MMIに複数社参加することになった。そのメーカーのなかの1社にはなんとNative Instrumentsが含まれる。

New MMA Members and New MMA Specs

Planned Major Update to MIDI Technology Attracts New Members to the MIDI Manufacturers Association (MMA)

Los Angeles, CA, November 6, 2018 – The MIDI Manufacturers Association (MMA) announced that Ableton, Aodyo, Audio Modeling, Art+Logic, Jammy Guitar, Melodics, MIND Music Labs, Native Instruments, OnSong, and TouchKeys have joined the MMA to collaborate with other hardware and software developers on extending the power of MIDI technology. The planned update to the MIDI specification will support new levels of musical expression and make electronic instruments easier to configure and use.

Standardized in 1983, MIDI 1.0 has adapted over the years to support all operating systems and communication protocols, but its core specifications have stayed the same. This initiative updates MIDI with in-demand options: auto-configuration, new DAW/Web integrations, extended resolution, increased expressiveness, and tighter timing — all while maintaining a high priority on backward compatibility. This major update of MIDI will support the development of a new generation of interconnected devices and preserve the relevance of existing MIDI 1.0 devices.

意訳するとこんな感じです。

MMAの新しいメンバーと新しい仕様

計画されているMIDI規格のメジャーアップデートは新しいメンバーをMMAに惹きつける

2018年11月6日、カリフォルニア州ロサンゼルスにて – MIDI規格のチカラを他のハードウェアやソフトウェアへと拡げていくために協力するため、Ableton, Aodyo, Audio Modeling, Art+Logic, Jammy Guitar, Melodics, MIND Music Labs, Native Instruments, OnSong, and TouchKeysがMMAメンバーに加わったことを、MMAはアナウンスする。計画されているMIDI仕様のアップデートは、音楽的な拡大を新しい水準でサポートし、電子楽器をより容易に構成し使うことができるようになるだろう。

MIDI ver1.0は1983年に規格化され、全てのオペレーティングシステム、コミュニケーションプロトコルをサポートするため、多くの年月をかけ変化適応してきたが、核となる仕様は変化することはなかった。この拡張されたMIDIアップデート構想は様々なオプションによる要請によって構成されており、自動同期、WEB統合型の新しいDAW、さらに細かくなった解像度(分解能)、多彩な表現、そしてさらに精緻なタイミングなどを挙げることができるだろう。過去に挙げられていた、これら全てがメジャーアップデートでは優先度の高いものとして採用される。このMIDIのメジャーアップデートは互換性のある新世代デバイスをサポートするし、既存のMIDI 1.0対応製品との関係性も保たれる。

それにしてもNative Instrumentsが加入したというのはけっこう胸が熱くなるニュース。

 

これまでのMIDIの欠点

80年代の画期的な規格化から、ローランドのシーケンサーやYAMAHAのシンセサイザーが台頭してきたことで、電子音楽というのは大きな発展を遂げたことは事実。KRAFTWERKやYMOの音楽はMIDI前史のもので、ハウスミュージックを成立させたROLANDのTR-909がMIDIに対応していたのは、結構重要なポイント。つまり、テンポの同期といった素人には難しい作業が劇的に簡単になり、素人でも音楽制作を容易なものにした点に、MIDI規格の意義がある。

ただし、その勢いも近年は多様化する制作体制に追いついていなかったと言わざるを得ない。たとえば音源の解像度。いまや自宅の録音でも96 kHz/24bitの解像度を採用するのが一般的になりつつある昨今、MIIDの分解能は満足のいくレベルではなくなってきた。同期スピードに関しても、最新のUSB Type-Cで接続された専用回線のほうが、よっぽどきちんと同期することができるし、転送される情報量ももちろん多いものだ。

 

DJとトラックメイカーには新しい道が開ける

僕は常々、DJとトラックメイカーの垣根はなくなっていくものだ、と思っていて、このMIDIメジャーアップデートの動きはそれを確信させるものだ。

現在、音楽業界で純粋にDJとしてだけキャリアを積んでいるというひとは結構少ない。むしろ元々プロデューサーだったひとがDJとして巡業しながら、トップDJにのし上がっていくという流れのほうが自然。

機材の進化に関してもそうで、Native InstrumentsのRemixDeckやSTEMSといった機能はDJ向けの機材ではあるけれど、実際にやっていることは「その場で音楽を制作している」と言ったほうがニュアンスとしては近い。とくにNative Instrumentsの機材に関しては、DJの機材も、トラックメイキングする機材もどちらも揃っていて、統合する規格があったほうがメリットは大きい。

 

期待したい仕様

個人的に新しいMIDI仕様に期待したいのは「プラグ」。プラグに制約されない仕様にしてほしいというところ。例えばLANケーブルでも、USBでも情報の転送仕様がMIDIであればOK、という仕様にして欲しい。

最近の機材ではちょこちょこUSBハブといって、パソコンに接続することなく、機材を介して新しい機材を接続できるハードウェア仕様になっていることが多いのですが、そういったハブに接続することで、ネットワーク全体が同期されるようにしてほしい。iPhoneやiPadで接続するDJコントローラーやトラック制作機材も連携できるとかが良い!

将来的には無線LANとかで同期されるようになってくれると、嬉しいんだけどなあ。

 

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