ひと昔前の音楽制作機材といえば、MIDI配線だらけの部屋のなかに並んだ単機能の機材と睨み合って、部屋のなかで行うようなイメージが強かったわけだけど、最近では機材自体にいろんな制作機能が充実してきているし、何よりコンパクトで高音質。ライブで使うにはもってこいの機材になりつつある。

Native Instruments – MASCHINE MK 3

だから例えば、DJをしながら傍でビートを刻んで、そのままトラックを作りながらパフォーマンスをする、なんてことをやるひとも結構多い。人気の機材でいうとAbleton Live対応のものが多いけど、最近だとNative InstrumentsのMASCHINEとかも人気。そんな群雄割拠のトラックメイキング戦争に、最近殴り込みをかけているのがPioneer DJなんですけど。そのPioneer DJから新しいマルチトラックシーケンサーが登場しました。その名も「SQUID」。

このたび発売する「SQUID」は、「TORAIZ」シリーズのコンセプトをさらに深化させ、シーケンス・パターンを素早くプログラムし、そのシーケンス・パターンをよりダイナミックに変化させることで、フレーズを次々に生み出すことができるマルチトラック・シーケンサーです。

「SQUID」は業界初となる「グルーヴ・ベンド」をはじめとした新たなインスピレーションを得るための演奏機能を多く搭載しています。また、各機能には最適なユーザーインターフェイスを個別に搭載することで、思いついたアイデアを即座に試すことができます。本体ディスプレイを見ながら行う設定作業を極力減らしたリアルタイム性の高いワークフローには、当社の長年のDJ機器開発のノウハウが活かされています。

また、「SQUID」はさまざまな音楽制作機器との同期演奏を可能にする豊富な接続端子を搭載しており、音楽制作やライブパフォーマンスにおける音楽表現の幅を広げることができます。「SQUID」で生み出したシーケンス・パターンを使い、当社の「SP-16」や「AS-1」をはじめとする電子楽器、PC/Mac上のDAWソフトウェアはもちろんのこと、近年盛り上がりを見せるモジュラーシンセサイザーやヴィンテージ・シンセサイザー、リズムマシンとも同期演奏することが可能です。

– – – マルチトラック・シーケンサーSQUIDを4月26日に発売(pioneerdj.com)

トラックメイキンカー向けのパフォーマンス機材として、これまでTORAIZとしてまとめられてきたシリーズの第三弾。パッと見た感じは、MASCHINE MK3みたいなパッド式なのが特徴。

Pioneer DJ – SQUID

これまでのTORAIZシリーズとしては、ステップシーケンサーやシンセサイザーとして使う用途で設計されたものが多かったので、ここに来てマルチトラックシーケーンサーが出てくるのは自然な流れかもしれません。

こうして見るとAD-1がシンセサイザーという観点からの音作りに特化していて、SQUIDはパッドの打ち込みに特化していることが分かります。ちなみに上位モデルのSP-1は液晶ディスプレイ付きという順当なラインナップ。

SQUIDのイントロダクション動画を見てみると大体機能は分かるのですが、マルチトラックのステップシーケンサーって普通、エディットセクションの(四角いボタンが並んでいるところ)上行の左から右に音が進んでいくようになっているところを、右列を上から下に進ませることがワンタップでできるようになっていたり、ライブでオーディエンスを飽きさせないための工夫が凝らしてあります。

概ね文句をつけるところは無いのですが、PCとの接続がUSB TYPE-Bになっているところがちょっと残念ってぐらいでしょうか。音楽制作で機材同士を同期するための規格である「MIDI」とかって、今後給電しながらデータ転送可能なUSB TYPE-C中心になるらしいし、デフォルトでUSB TYPE-Cにしておいて変換プラグつけるとか、そういう仕様にして欲しかった感はありますね。

Pioneer DJ – SQUIDの背面パネル Mini-USB接続の模様

「偶然生まれた音を逃さず楽曲に盛り込んでしまえる」エディット機能が豊富で、それに先立つ「ユーザーが思いもしなかったフレーズを生み出す」ことに工夫が練られたマルチトラックシーケンサー。Pioneer DJのこれまで強かったDJミキサーやエフェクターの思想が色濃く反映されているなあと感じました。案外Pioneer DJが目指しているのは、DJとトラックメーカーの境界線を曖昧にしていくことなのかもしれません。Native Instrumentsもそうではあるんだけど、アプローチの仕方が違って面白いですね。

 

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