ご相談大歓迎、、、でもその傾向は

ビギナーDJさん向けに「Q&A DJスクール」というシリーズ記事を書いているけど、末尾に相談フォームを設置していることもあり、ちょこちょこDJ機材の相談メールをもらっている。「ライブ配信をやりたいんだけど、○○はiPhone対応ですか?」とか「このDJコントローラーは4ch対応ですか?」とかとか。わざわざ見ず知らずのブロガーに相談メールを送ってくるぐらいなので、すごく丁寧なひとが多くて個人的には大歓迎。ただ、最近思うのが「機材メーカーの商品詳細ページに全部書いてるんだけどなあ」と感じる質問もちらほらあるってこと。

これは単に「商品ページをよく読んで!」と言いたいわけじゃない。むしろ、それほどまでにオーディオ機器というのはブラックボックス化していて、一般のひとにとってはよく分からないものになりつつあるということなんじゃないか?ということだ。

試行錯誤して初めて分かる知識

高校時代、部活に入っていなかった僕は、実は幽霊部員的に放送部に在籍していた。部活に入らなかった理由は、友達とバスケットボールチームを組んで遊ぶためだったり、生徒会の仕事をやってみたかったからとか、いろいろあるんだけど、最も重要な理由としてはクラブでDJをするため。毎週水曜に針だけ持参してクラブに行って、落ち着いた曜日のDJをしていたのだった。クラブの機材はアンプの出力も大きいので、セッティングは丁寧に扱う必要があったこともあって、ビクビクしながら見様見真似でケーブルの片付け方から、スピーカーにダメージを与えないセッティング方法なんかを覚えた。TVのイヤホン端子から音を録音してDJに使うことができる、という技を覚えたのもこの時期になる。

地元では大学生でも行かないようなディープな音楽通が集うクラブだったこともあって、幸い不良にはならずにすみ、僕は割と真面目なほうの高校生だった。学校の行事にはお祭り人間として率先して参加していたし、何よりステージを作ったり機材を触るのが好きだった。そんなこんなで、学校の催し物の裏方なんかをよくやっていて、放送部の顧問に目をつけられたというわけ。機材を触れる男手が欲しい。幽霊部員でも良いので入部してくれ、と頼まれて二つ返事で入部することに。

学校の放送部というとお昼休みの放送担当みたいなノホホンとしたイメージを想像するひとが多いと思うけど、母校の放送部はスパルタ系でアナウンサーガチ勢が所属する純然たる「放送」部だった。実際ひとつ上の先輩はNHKのアナウンスコンテストに出場して、全国大会まで出場。僕の同級生ももちろんインターハイを目指して毎日ナレーション原稿を読んでいる、そんな部だ。

ただ女子ばかりの部になってしまって、必然的に機材そのものに詳しいひとがいない。というわけで召集されたのが僕だったのだ。

機材の知識が乏しい部員や顧問に変わって、体育祭や文化祭のときには校内の放送設備を駆使するのは楽しかったし、何より機材を最新のものに買い替えたりするのも楽しかった。行事のたびに外部の会社と打ち合わせをすることもあって、最新機材を発注して入れ替えたり。高校時代は無茶苦茶楽しかったのだけど、そうして機材の知識が身についた。

知識というのはそんな風に自然と身についていくものだ。ただそれには一定の環境が必要不可欠で、僕のように幸運にも優しい大人や機材に囲まれて成長するひともいれば、文化祭なんて一切参加せずに大人になってしまうひともいる。ただ最近思うのは、これまで常識だと言われていた知識すら、そうでなくなりつつある、ということだ。

ブラックボックス化していくガジェット

20年ぐらい前まではレンタルCD屋で借りてきたCDをカセットテープやMDに録音するために、いろんなケーブルを買ってきて、一通り接続してという作業が必要だった。イヤホン用のケーブルなのか、光ケーブルなのかとか、そういう前提となる知識が必要とされる感じがあった。だから30~40歳ぐらいのひとなら「CDラジカセとMDウォークマンを繋ぐために必要なケーブル」と言われれば何のことか大体分かる。

だいたいのDJの机はこうなります

でも今はそんなこと考える必要は一切ない。全てが知識不要だ。そして機材同士を接続するケーブルももちろん不要。だからケーブルに流れている信号が、デジタルなのか、アナログなのか、想像するのが難しい時代に突入しつつある気がする。

そもそも「録音」する必要が無い。ストリーミングで再生すればいつでも音楽を聴くことができるし、YouTubeを開けばMusicVideoもタダで視聴できる。Bluetoothイヤホンを使えば、イヤホン端子の存在しないiPhoneでも無線でヘッドホン/イヤホンから音を出力することだって簡単にできる。

そんな時代に知識は必要無い。僕たちはBluetoothの電波が何GHzか何て知らなくて大丈夫だし、何ならスマートフォンが勝手に音を調整してくれて、あたかもコンサートホールにいるような音響調整さえやってくれる。

だからDJになりたい!とか思っても前提となる知識が圧倒的に少ない。「フォンジャックって、これイヤホン端子の大きなバージョンなんだなあ」とか「RCA端子って、これTVのケーブルの黄色い映像ケーブルが無いやつだな」とか納得しながらあれこれ接続して、足りないものがあったり・・・みたいな試行錯誤するタイミングが全然無い。

そう考えると、何でも便利な世の中っていうのも、かえって新しいものを習得したりすることがハードルになる時代でもあるんだなって、とりとめもなく最近は考えたりしている。

 

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