Native Instrumentsは音楽機材ををリリースしている会社のなかでも、個人的に最も信頼しているブランドだ。操作感が心地よく、かつ痒いところに手が届いた機能性をもつ多くの製品をもち、絶えず製品やサービスをアップデートしている感じがあって、ユーザーとしては安心して使い続けられる感じがある。
先日、Native Instrumentsの音源ライブラリー「KOMPLETE 11」がオフィシャルサイトでセール価格になっていることを記事にしてみたんですが、結局フルバージョンしかセールになっていなくて僕は購入しませんでした。惜しいことしたかな・・・と思っていた矢先にニュースが。なんと同じNative Instrumentsから12の新製品が一挙にリリース。そのなかにはKOMPLETE 11の後継である、KONPLETE 12も含まれます。
目次
FOR THE MUSIC IN YOU
Native InstrumentsはもともとDJ関連製品、音楽制作関連製品と幅広いプロダクトをつくってきたメーカー。今回は全社部門が総力を挙げたプロジェクトであることが窺えます。
「FOR THE MUSIC IN YOU」と名付けられたこのアップデート/リリースには、音源ライブラリのみならずDJコントローラー、キーボード、PCDJ向けソフトウェア、関連サービスなど、ありとあらゆるものが詰まっている模様。動画も公開されて、バンバン広告も配信されてるみたいですね。
発表されたのは全部で12のプロダクトやサービス。ハードウェアで完全な新製品は無い模様ですが、キーボード製品のKOMPLETE KONTROLはディスプレイを排したA-SERIESという廉価版が登場。
特徴的なのがウェブサービスを新たにスタートさせているところですかね。
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DJ分野だと競合にあたりPioneer DJは、ソフトウェアをサブスクリプション(月額課金制)にしたり、DJのコミュニティサービスを立ち上げたりしていますが、今回のNative Instrumentsによる取り組みでは、そういったものに加えて、ループ音源を自由に使えるようなライブラリーサイトをサブスクリプションで立ち上げたりと、より事業ドメインを広げてきています。
ハードウェア会社が、こうして便利なウェブサービスにどんどん参入するのは、いちユーザーとしては嬉しい。
PCDJ/データDJ関連
DJコントローラーでは、KONTROL S2とS4がアップデート。どちらもMK3になったという認識で問題ないかと思います。S2、S4の動画にはiPhoneやiPadとの連携が明確に出てこないのですが、これまでの流れからすると、おそらく対応ではないかと。リリース後に調べてみようと思います(参考:iPhoneやiPadで使えるDJコントローラー一覧はこちら)。
2モデルの大きな変化としてはジョグホイールにモーターが搭載されたこと。
これはジョグホイールが回るわけじゃないと思いますが、おそらくバイブレーションとして使われていて、キューポイントやループのスタートとエンドを指先で感じることができるようになっているみたいです。またカラーディスプレイがついたことと、画面位置が下側に配置されていることもポイント。あと地味に力説したいポイントとしては、コントローラー部分の配置が左右対称ではなく、完全な2デッキ性になったこと。CDJを2台使うような、リアルな現場感覚に合わせるのは最近の潮流になってきていますね。詳しくはiOS(iPhone, iPad)対応のDJコントローラーはTRAKTOR KONTROL S2がスタンダードになりそうという記事でご確認ください。
合わせて、人気のPCDJソフト「TRAKTOR PRO」がバージョン3となって、「TRAKTOR PRO 3」に。Traktorの特筆すべきポイントとしては、Soundcloudが使えるようになったこと(e.g.Traktor Proがver3にアップデート!SoundCloud対応に)。
ここ最近はDJコントローラーやソフトの大きな変化というのは業界的にありませんでしたが、この前リリースされたPioneer DJからの「DDJ-400」といい、新しいUIの波が来ているなあと感じます。。
音楽制作関連
音楽制作まわりでの大きなアップデートは、まずKONPLETE11が12にアップデートしたことですね。基本的にプロ向けの製品なので、価格は高いですが、11と同じくバンドル版SELECT、通常盤、ULTIMATEというラインナップに「KOMPLETE 12 COLLECTOR’S EDITION」という最上位版が追加されました。価格はなんと19万。ただし、90,000以上のサウンドライブラリ、45以上のExpansions、収録容量は全部で900GB。KOMPLETEは発売当初24マイぐらいのCD-ROMに音源を収録していたそうですが、今やHDDがついてきます。
大量の音源が収録されているため、「初心者には不向き」と言われがちなKOMPLETEシリーズではありますが、ちょこちょこ音源を買って散財するより、セットになったものを購入したほうが、お買い得ではあるので、本当は初心者向きなのかもしれないなあと12のレビューを見ていると感じます。
すでにKOMPLETE 11や、KOMPLETE KONTROLなどのトラックメイキング機材をお持ちの方は、アップグレードで対応するともっとお安くなります。
そのほかにもバーチャルシンセサイザーのMASSIVEはMASSIVE Xに、サンプリングプラットフォーム(サンプラー)であるであるKONTAKTも新しいバージョン「KONTAKT 6」に。
キーボード関係としては、KONTROL S88が新しくなったことと、ディスプレイなくしたA SERIESというのが登場。
25鍵盤で18,000円はとても安いと思うので、Native InstrumentsのMASCHINEで音楽制作を始めるユーザーは増えそうな予感。S88はプロ向けなので買うひとを選ぶかもしれませんが、Native Instrumentsの音楽制作機材は、今後全てカラーディスプレイ搭載になっていくんだろうなと感じる仕上がり。
あと忘れてはならないのが、MASCHINE MIKCRO。昨年は通常版のMASCHINEがMK3にアップデートされましたが、こちらのミニサイズ版「MASCHINE MIKRO」もMK3に。
MASCHINE JAMやMASCHINE MK3にも搭載されている、スマートストリップがついに実装され、「なぞる」だけでエフェクトやパラメータの調整ができるようになりました。僕はMASCHINE JAMのようなシーケンサーっぽいタイプが好きですが、パッド派の方は持ち運びもできるMASCHINE MIKRO良さそう。MASCHINEシリーズに関しては最新情報をこちらにまとめているので、音楽制作に興味がある方はチェックしてみてください。
その他の関連サービス
あとはウェブサービスの充実。まだ詳細は分からないですが、「SOUNDS.COM」「THE LOOP LOFT」「METAPOP」という3つのサービスがローンチしています。
SOUND.COMは映画音楽やPodcastのBGMにも使えるロイヤリティフリーのループ音源ライブラリ。サブスクリプション制になっていて、ユーロで9.99なので日本円にして月額1300円ぐらいでしょうか。日本ではまだ使えないようですが、今後公開予定とのこと。
The Loop Loftは音楽プロジェクトに使えるループ音源などが使えるライブラリーサイト。こちらも著作権フリーで使いたい放題。料金はDLしたい収録音源ごとにパッケージになっています。
最後にMetapop。これはミュージシャン同士がつながることができるコミュニティサイトで、トラックを公開したり、フィードバックをもらうこともできます。厳密にはSNSといういうより、プロジェクト管理ツールのような機能も実装されていくのかもしれません。
まとめ
ニュース的に紹介してみましたが、このリリースはすごい破壊力があって、ハードウェアとソフトウェア、ウェブサービスを同時にリリースするという、かつてない取り組みになっています。ウェブサービスのサブスクリプション会員が増えていけば、企業的にはハードウェアの価格を下げてウェブサービスとの連携を狙うのが常なので、今後が楽しみ。そろそろMASCHINE JAMとMASCHINE MIKRO、KOMPLETE 12をセットで買おうかなあとぼんやり思っています。