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仕事の領域に変化があって27インチiMacを購入したのが2019年。かれこれ2年ほど経過したiMacは、趣味に仕事に未だ全く問題なく活躍しているのですが、いろんなデータを突っ込んでいることもあってか、さすがに容量が危うくなってきました。そこで外付けのハードディスクなど検討した結果、NASを自作してみました。案外面白かったので、BAFFALOとかの既製品じゃないものが欲しいという型には是非おすすめしたいです。

DJやトラックメイカーはデータ管理が命

限界を迎えつつあるiMacのFusionDrive

レコードではなく、wavやmp3データとDJコントローラーを使ってDJをしている方であれば、パソコンのデータ容量って実は結構な死活問題。楽曲数が多くなればなるほどデータ量は大きくなるし、プロの場合だとmp3よりもデータ量の多いwavファイルを使っているケースのほうが多いので、なおさらハードディスク容量がパンパンなケースは多いです。

僕の場合、それに加えて楽曲制作に使うような楽器音源のアプリケーション向けデータが膨大にあるため、3TBあるiMacの3分の1はそれに占有されています。最近は動画を撮影したりしていることもあって、データ増加量が加速度的に上がってきています。

理論的には内臓ハードディスク限界までデータを書き込むことはできますが、そうした使い方をするとエラーも頻発するので、それは避けたい。というわけでiMac内を占める音楽データはもちろん、動画データなど、あらゆるものを外部のハードディスクへ移行することにしました。

普通に外付けにしようと思うと、実は結構安価なポータブルHDDなんかもあったりはします。

ただ今回は、大容量でいろいろとカスタマイズ可能な選択肢ということでNASと呼ばれる外付けストレージにチャレンジしてみました。

NAS(Network Attached Storage)とは

簡単に書くと宅内ネットワークにある外付けハードディスクドライブ

今回組んでみたNASというのは「Network Attached Storage」の略で、シンプルにパソコンと繋がったストレージを超えて、(多くは自宅や会社の)ネットワークに接続されているストレージという意味です。普通のポータブルHDDと何が違うのか?というと、ネットワークに繋がっているため、大人数でデータを共有できたり、Dropboxなどのクラウドストレージサービスと自動的に同期するような仕組みをつくることも可能。さらに書くと、自宅で同じネットワーク内につながっていれば、iPadといったタブレット、スマホからデータを視聴することも可能。音楽データはもちろんですが、映画などをデータでたくさん保存している方にも便利なストレージの仕組みです。

詳しくなくても簡単に設置できる大容量NASはたくさんある

NAS=ネットワークにつながったストレージ、外付けハードディスク、というざっくりとした説明ですが、実はそんなに難しいものでもなく、いろんなメーカーから簡単に設定できるモデルがたくさん登場しています。有名なのはBAFFALOで、LinkStationtというブランド名でいろんな容量や機能のNASを発売しています。

小さなコンピューターにハードディスクがガツンと入っているとイメージすれば分かりやすいかと思います。これを自宅のWiFi環境やLAN環境に繋げば、便利なファイル共有サーバーとして使えます。1TBのモデルから12TBまで揃ってあるので、あんまり細かいことを考えずに大容量環境が欲しい方は上記のモデルがおすすめ。

玄人向けにはカスタマイズや中身の交換ができるものも

当初僕もBAFFALOのNASを買ってデータ移行すれば良いやと思っていたわけですが、データ富豪としては「今後もデータが増え続けたらどうすれば良いのかな・・・」というのを調べてみたところ、既製品のNASのほとんどはNASそのものを買い直す必要があるということが判明。

データ容量が足りなくなったら、内臓ハードディスクを買い足して差し替える・・・みたいな運用がしたいなと思って、調べてみたところ自作すればできるらしい。というわけで今回はQNAPという台湾メーカーのケースと、内臓HDDを別で購入することにしました。

10TBのハードディスクは2つ購入して、同じデータを常に書き込んでバックアップできるようにRAID1という仕組みでミラーリングしてみました。

QNAP TS-253D×WD Red Plusで20TBのNASを組む!

QNAPのケースはいろいろカスタマイズできるのが特徴

今回BAFFALOなどの既製品NASではなく、QNAP製のケース(実際には小さなコンピューター)にした理由はカスタマイズ性。QNAPのケースには様々なオプションパーツが販売されています。たとえばLANのスピードアップ。

ケースによって対応しているパーツが違うので注意ですが、上記のパーツはLANコネクタを1Gbitから10Gbitへ変更するための拡張パーツ。10GbitLANの他にもThunderbolt3へ変更するカードや、M.2SSDのキャッシュメモリを増設するものもあります。

なので容量が満タンになったら丸ごと買い替えるのではなく、ハードディスクだけを増設したり、スピードアップしたいなら拡張カードだけを買い替える、などの対応が可能になります。長期的に考えるとこれはお買い得。

メモリを差し替えて増設

今回は第一弾なので、拡張カードは購入せずフラッシュメモリだけ差し替えることにしました。NASは小さなコンピューターなので、パソコンと同様メモリが入っています。このメモリ、デフォルトが4GBなのですが最大8GB(実際には公式は非推奨だけど16GBまでいけるらしい)まで増設できるとのことなので、スペックを少しあげるためにメモリを増設することにしました。今回購入したケースに対応したDDR4 2400規格のメモリを購入。

まずハードディスクを固定するためのトレイを引き出して黒いカバーをパカっと外すと、内部のフレームが現れます。フレームの隙間からメモリ差し込み口が覗いているので、まずは一つだけ挿さっているメモリを外して、購入した新しいものに差し替えていきます。

元から4GBメモリが挿さっているなら、購入するのは追加する4GBだけで良いのでは?と思う方もいるかもしれませんが、挿すメモリは通信する周波数などを揃えておいたほうが良いらしいので、2つとも新しいものに変えてみました。

トレイに内臓ハードディスクを2つ取り付けて差し込む

メモリを差し替えた後は、ハードディスクドライブを設置していきます。一般的なNASはケースにそのままハードディスクドライブを差し込むのではなく、引き出しのようなトレイにハードディスクを固定して、それをケースに挿入するというのが普通。というわけで購入したWestern Digital社製の10TBハードディスクを開封して設置していきます。

トレイへの固定はネジ留めでしたが、QNAPのケースに固定用のネジが付属していたため、特に固定用のアクセサリなどは購入していません。ちなみに今回のハードディスクは3.5インチ型のもので、対応するネジも3.5インチ向けと説明書に記載のあったものを使っています。2.5インチ用のネジも付属していたので、小型のハードディスクやSSDなんかにも対応している模様。

トレイにハードディスクを固定できたらケースに差し込んでいきます。最初は「こんな軽く差し込むだけで大丈夫かな?」と初心者にありがちな不安が頭をよぎりましたが、あっけなく完成してしまいました。

LANケーブルでルーターに接続

最後に接続です。僕の今住んでいる部屋は元からインターネット回線が敷かれているので、コンセント付近にLANコネクタが既にあり、直接WiFi用のルーターを接続しています。今回はそのルーターへ接続。付属していたLANケーブルで接続しました。さらに、NASへの接続も速いほうが良いかなと思って、iMacとルーターもLANケーブルで接続することにしました。

自作NASの設定=サーバーの設定(組み立てたQNAPのNASを設定)

NASは初期設定が必要

組み立て接続が終わったところで早速起動。とは言ってもすぐに使えるわけではありません。NASは言わば一種のファイルサーバー、小さなコンピューターなのでセットアップ(設定)が必要となっています。QNAP製品は高機能で様々な用途向けにカスタマイズ可能なのですが、少々設定が面倒。NASを紹介しているYouTuberなんかは大抵この面倒な部分をすっ飛ばして「めっちゃ便利!」とか言っているケース多いので、参考までに自分が設定した内容ぐらいはまとめておこうかなと思います。

QfinderProをDLして、まずは管理人とパスワード設定から

LANケーブルで組み立てたNASをネットワークに繋いだだけの状態から、まずはパソコンからNASへ接続できる状況をつくります。これにはQNAPからリリースされている「QfinderPro」というアプリケーションを使ってネットワーク上のNASを検索して接続します。アプリを立ち上げたら一瞬でNASを初期化してくださいと出ました。SMTPサーバー設定というのは、不具合があったときにサーバーからメール送信を行ったりする機能ですが、一旦スキップ。

まずはNAS自体の名前、管理人(adminで固定)のパスワード設定を行い、タイムゾーンはGMT+09:00(Tokyo)に設定、次に出てくるネットワーク設定はIPアドレスを自由に設定できるようでしたが面倒そうなので「自動」を選択。アクセスするパソコンのOS設定は今後のためにもWindows/MacOSを両方とも選択しておきました。以上で内容を確定させると、NASがカタカタ動き始めて初期化が始まります。

時間をおくとクイックコンフィギュレーションは終了。終了画面には「NAS管理に移動」というボタンが現れるので、押すとブラウザ経由でNASの設定画面に移ることができるようになります(QfinderProの画面からNASを選べばそこからも遷移可能)。

RAID設定、ストレージプール、ボリューム、スナップショットとは

初期化も終わって・・・と思いきや、実はここから設定の本番です。この段階ではNASの管理人と日付の設定、ネットワークアドレスなどのごくごく初歩的な設定が終わっただけなので、ここからハードディスク容量の設定を行なっていきます。が、ややこしくて確実につまずくと思うので、まずはQNAPのNASにおけるストレージ容量の概念を簡単に説明しておきます。

他社製品で一般的なのか不明ですが、QNAPのNASにはストレージプール、ボリューム、スナップショットというざっくり言うと3つの覚えておくべき概念があります。まずはストレージプールから説明しますが、その前にRAID設定というハードディスクの使い方について説明します。

常に同じものを2つ保存してバックアップするのがRAID1

僕が差し込んだハードディスクはこれからRAID設定というのを行う予定。RAID設定というのは接続されたハードディスクをどういうふうに使うか?という設定のことで、今回はRAID1での設定を予定しています。RAID1というのはミラーリング、つまり10TBのハードディスクが2本挿さっていて、2つに同じデータを書き込むことで万が一故障しても片方からデータ復旧する仕組み。要するに、今回組み立たNASは10TBのハードディスクが2本挿さっているのですが、MAX保存できる容量というのは10TBになるわけです。

で、その使える10TBの容量はそのままでは使えなくって、「10TB丸々使いますねー」とか「いったん7TB貰いますねー」みたいな設定を行う必要があります。その何TB使うかという設定が「ストレージプール」という概念です。容量MAXで設定することも可能だし、低めに設定しておいて、後々別のストレージプールを作成することで用途を分けておく、なんてことも可能です。

使える容量の割当が必要

次に設定が必要なのがボリューム。ボリュームというのはストレージプールの中をさらに分割する単位で、ストレージプールを均等に分割するも良し、ストレージプール容量の許す限りバラバラに設定するのも良し。さらに、丸々一つのボリュームにしてしまうのもあり。

QNAP製品の場合、容量はもちろん、3種類の機能が異なるボリュームのなかから、好きなものを選ぶことができます。静的ボリューム、シックボリューム、シンボリュームの3つですね。

静的ボリュームシックボリュームシンボリューム
書き込み速度3つのなかでは最も速い良好良好
親ストレージ領域RAID グループストレージプールストレージプール
スナップショットのサポート
(高速バックアップと復元)
×

静的ボリュームはストレージプールをつくることなく、RAID設定が済んだストレージにそのまま設定が可能で、しかも余計な機能を使わないので高速に読み書きすることができます。ただし次に記載するスナップショット機能というのが使えないのが弱点。

なぜスナップショット機能が必要なのか

スナップショット機能というのはQNAP独自の機能で、簡単に書くと高速復元のためのバックアップ機能。ストレージプールに対してスナップショットを撮影すると、その時点でのデータ内容をバックアップして、設定すれば定期的に更新し続けます。

これがどういうときに有効かというと、誤ってデータを削除したときやハッキングされたときです。特に最近ではNASに不正アクセスして勝手に暗号化をかけて身代金を要求するランサムウエア(コンピューターウイルスの類)も増えていて、実際QNAP製品もそのターゲットになってニュースになりました。そんなときでもスナップショットを定期的に撮っておけば、万が一のときに時間を巻き戻して暗号化される前の状態に戻すことも可能。

スナップショットを有効にしておくとストレージプールに自動的に保存されていくものですが、自分が使いたい容量と競合しないよう、あらかじめ「保存されたスナップショット領域」というのを設定しておくのがおすすめ。本来保存しておきたいデータと、スナップショットに使うべき容量を分けておくことが可能です。

実際に設定していきます

いくつものストレージプールやボリュームを設定できるのですが、僕は複雑な使い方は慣れていないため、ストレージプールもボリュームも1つだけ用意することにして、用途別のフォルダをつくる方針で設定していくことにしました。手順としては、まずはストレージプール領域を設定し、保証されたストレージプール領域を割当て→残りをシックボリュームとして全て割り当てるという流れです。ざっとキャプチャを撮影したので載せておきます。

ストレージプールを作成する

ブラウザを使ってNAS管理画面を開くといくつかのアプリがインストールされているのが分かります。このなかの「ストレージ&スナップショット」というアプリで設定していきます。

開くとチュートリアルが始まるのでいったん「次へ」を押しながらざっくり読んでおくことをオススメ。最後までいくと、新規ストレージプールというボタンが右下に表示されるので、クリックするとストレージプール作成ウィザードが始まります。

ストレージプール作成ウィザードでは、まずRAID設定から始まります。ケースに入っているハードディスクドライブが認識されるので、2つのハードディスクドライブを選んでRAID1を選択。容量がなくなりそうになったときのアラートは設定していません(チェックを外す)。最後に「この設定で作成して良いですか?」という画面が現れるので作成ボタンをクリック。少々時間がかかりますが、ストレージプールが作成されると、「作成完了」のポップアップが表示されます。

このとき、そのままボリューム作成に移ることも可能です。ただし今回は先に「保証されたスナップショット領域」を割当ておきたいので、ポップアップは閉じました。

先に保証されたスナップショット領域を確保

ポップアップを閉じたら、アプリは開いたままで左側にあるメニューからスナップショットという項目を開いてスナップショット領域の設定を行います。まだボリュームが割り当てられていないので、既存のアプリなどに使われている領域だけ使われています。ちなみに10TBHDD×2のRAID1だから、容量は10TBあるはずではないか?と思う方もいるかもしれませんが、データ容量は1GB=1000×1000×1000 Byteと計算する場合と、1GB=1024×1024×1024 Byteと計算する場合があるのでこれは誤差の範囲内です。

設定画面にある「保証されたスナップショット領域の有効化」にチェックを入れてストレージプールの何%確保するかを選びます。デフォルトはもっと大きかったですが、前の日の分があれば良いだろという理由で今回は10%に。

これまでのスナップショット設定が消えますのでご注意を、という警告がでるのでOKボタンを押したら設定は完了。最初の画面を確認すると「保証されたスナップショット領域」がきちんと割り当てられていることが分かります。

残った領域を全て1つのボリュームに割当

最後の仕上げとして、残りの領域全てをボリュームとして設定します。ストレージメニューの「ストレージ/スナップショット」を開くと、右上に作成メニューがあるので、ここから「新規ボリューム」を選択。選択するとボリューム作成ウィザードが開始されるので、ロケーションには先ほど作成したストレージプールを選択。ボリュームの種類はスナップショットを使いたいので、「シックボリューム」にしました。

ボリューム容量を選択する部分は「最大に設定」を選択すると、ストレージプールに残っている領域全てがボリュームに割り当てられます。アイノード別バイト数というのは1度に書き込むデータサイズですね。大きければ速度が速くなるらしいですが、いじると怖いので標準的な32Kで設定しておきました。完了ボタンを押すとボリューム作成が始まります。この作業結構時間がかかるので、夜寝る前とかにやることをおすすめします。

ボリューム作成が終了した後にストレージ画面を確認すると、無事シックボリュームが作成されています。これで必要な作業は終了。パソコンからNASにデータ保存する際はadmin権限でアクセスしても良いですが、セキュリティ上adminを多用するのは良くないとのことなので、admin権限とほぼ同等のユーザーアカウントを作成して使っています。

管理人のQNAP NASの使い方

スナップショットは自動で定期的に残しておくことができるので、一応定期アクションとして1日1回撮影するように設定しています。その他でいうとDropboxのクラウド上に保存してあるデータとも自動的に同期するようにしていて、外出先でDropboxフォルダにあるものに変更を加えると自動で同期します。

具体的な使い方としては音楽ファイルやNativeInstrumentsのKOMPLETEで使っている音源データを格納していて、他には映画のデータなども移しました。データをiMac本体から外部ストレージに移動させると、iMacでミュージックアプリやAppleTVを起動した際にデータが迷子になってしまうので、読み込むライブラリフォルダの設定なども変更が必要になります。これはAppleアプリに限らず、NativeInstrumentsのアプリも同様。

ただ一度設定してしまえば、データは全て外部にあるのでiMacを買い換えるときもデータの移動をする必要がなくなるし、そもそも大容量のパソコンを購入する必要がなくなるので、気分としてはかなり良いですね。

音が気になる!うるさい!という方はNASの静音化を

今回購入したQNAPのNASとWestern DigitalのHDDですが、Amazonを見ると「音がうるさい」とコメントしているひとが多かったので、設定以上に音が心配だったのですが、僕の場合はそんなにうるさくは感じませんでした。ただ、念の為にNASの静音化もチャレンジしてみたので、うるさいと感じた方は参考にしてみてください。

・うるさいNAS(HDD)を防振・静音化する4ステップ

これからのDJにはパソコンの知識も必須

組み立てながら思いましたが設定はちょっと勉強が必要ですが、組み立て自体は簡単だし、高音質/大容量データを扱うDJであれば、今後はこうしたパソコンに関するスキルって結構重要なんじゃないかなあと思ったりもします。

楽曲データで容量が足りないよ〜と困っている方は是非チャレンジしてみてもらいたいです。

 

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